この非生産的な旅(当初は「最弱への道」と名乗っていたが,5で打ち間違えた.それを気付かぬままここまで来てしまい,もはや後戻りはできない)も,オールド・エキスパンションという一番最初の,また一番峭刻な山道を越した.その手引となったのは18000wordsで,この偉大な先達による手助けがなければここまで来れなかったろう.

しかしながら12年も前に著されただけあり,今から見れば多少のほころびがあるのはやむを得ない.今回は,排名にあがった中から評価を上方修正できると思われる卡を特集してみたい.

100位
Carnival of Souls / 魂のカーニバル (1)(黒)
エンチャント
クリーチャーが1体戦場に出るたび、あなたは1点のライフを失い、あなたのマナ・プールに(黒)を加える。
いきなり評価が大幅修正された卡だ.不名誉排名の末席から,カジュアルレベルといえど1アーキタイプの中核まで,魂のカーニバルが石勒なみの躍進を遂げた理由は2つだ.即ち頭蓋骨絞めと垣間見る自然である.自軍のクリーチャーが用済みと見るや頭蓋骨絞めに送り込んで辞すところのない未開部族の酷薄さに,垣間見る自然を介して中原の動員力が組み合わさったコボルドクランプは,まさに石勒の生きた北朝時代を連想させる(牽強付会)

93位
Riptide (青)
インスタント
すべての青のクリーチャーをタップする。
マーフォークを対策する上で,Riptideが甚だしく無能とは思わない.魂の洞窟を得たマーフォークに対してBig Blueは,アドバンテージの優位を確立できても盤面をある程度コントロールできないとすぐ負けてしまう.僕がBOMの決勝戦でシャッフルしている最中,アラジンのランプからマジックの精が現れ,こう言ったとしよう.「武漢君,どうやら決勝の相手はマーフォークらしいぞ.君が望むなら,デッキの定業を1枚Riptideに取り替えてやってもいいんだが」僕は相当悩むだろうが,彼の提案を受け入れるかもしれない.もちろん,セファリッドの女帝ラワンと取り替えてくれると言うならそっちにするが.

92位 Sea Troll これは先に述べたとおりだ.

89位
Port Inspector / 港の検査官 (1)(青)
クリーチャー — 人間(Human)
港の検査官がブロックされた状態になるたび、あなたは防御プレイヤーの手札を見てもよい。
1/2
2マナ1/2は弱いが,それだけだ.港の検査官で毎ターンコツコツ攻撃することは勝ちに近づくことであるし,いざという時はチャンプブロックして命を守ってくれる.登場時にアンタップ状態の森を生け贄に捧げろとか無理なことは言ってこない.そしてピーピングという本当にささやかなプレゼントもくれる.

86位 タリスマンサイクル

Nacre Talisman (2)
アーティファクト
プレイヤー1人が白の呪文を唱えるたび、あなたは(3)を支払ってもよい。そうした場合、パーマネント1つを対象とし、それをアンタップする。
パーマネントのアンタップは弱い能力ではないが,3マナは重すぎる.それでも,18000wordsの執筆時に,Time Vaultにパワーレベルエラッタが施されていたことは押さえておくべきだろう.今ではTime Vaultをアンタップして追加ターンを得られるほか,金属細工師やトレイリアのアカデミーといった大量マナ生成パーマネントを起こすことで何かしら悪用できる.アカデミーベルチャーに青タリスマンを入れたとして100試合中80試合くらいはノイズにしかならないだろうが,17~18試合は「足手まといにはならなかったけど他のでいいんじゃ?」程度の働きをするだろう(アーティファクトとしてアカデミーの水増し,修繕のコスト等)そして残り2,3試合では,タリスマンはアカデミーと組んでマナ加速を担ったり,Time Vaultを起こしたりして活躍するだろう.

77位
Saproling Infestation / 菌獣の横行 (1)(緑)
エンチャント
プレイヤー1人がキッカーするたび、あなたは緑の1/1の苗木(Saproling)クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。
多重キッカーで救われた卡.

72位
Harvest Mage / 収穫の魔道士 (緑)
クリーチャー — 人間(Human) スペルシェイパー(Spellshaper)
(緑),(T),カードを1枚捨てる:ターン終了時まで、あなたがマナを引き出す目的で土地をタップした場合、それは他のいかなるタイプと量のマナの代わりに、好きな色のマナ1点を生み出す。
1/1
1マナ1/1に長めのフレーバーテキストが書いてあると思えば,まあ

71位
Greener Pastures / 緑濃き牧場 (2)(緑)
エンチャント
各プレイヤーのアップキープの開始時に、そのプレイヤーがコントロールしている土地の枚数が他の各プレイヤーよりも多い場合、そのプレイヤーは緑の1/1の苗木(Saproling)クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。
全然弱く見えない.ランパンとブーメラン,併合を積んだ青緑ランデスコントロールのフィニッシャーとして合格点だ.

70位
Chance Encounter / 偶然の出合い (2)(赤)(赤)
エンチャント
あなたがコイン投げに勝つたび、偶然の出合いの上に運勢(luck)カウンターを1個置く。
あなたのアップキープの開始時に、偶然の出合いの上に運勢カウンターが10個以上ある場合、あなたはこのゲームに勝利する。
熱狂のイフリートのエラッタ撤回により不名誉排名を名誉除隊.

61位
Aisling Leprechaun (緑)
クリーチャー — フェアリー(Faerie)
Aisling Leprechaunがクリーチャーをブロックするかクリーチャーによってブロックされた状態になるたび、そのクリーチャーは緑になる。(この効果は永続する。)
1/1
プロテクションつけるとか工夫もできるし,1マナ1/1にしてはマシな方だと思う.

59位
Mossdog / 苔犬 (緑)
クリーチャー — 植物(Plant) 猟犬(Hound)
苔犬が対戦相手がコントロールする呪文や能力の対象になるたび、苔犬の上に+1/+1カウンター1個置く。
1/1
苔犬の能力は61位よりはなんぼかマシだ.例えば,剣を背負った苔犬を稲妻で焼くことができない.こいつが59位で95位がTidal Flatsというのは不可思議なものがある.

58位
Divining Witch / 預言する妖術使い (1)(黒)
クリーチャー — 人間(Human) スペルシェイパー(Spellshaper)
(1)(黒),(T),カードを1枚捨てる:カード名を1つ指定する。あなたのライブラリーを上から6枚、追放する。あなたが指定したカードが公開されるまで、あなたのライブラリーのカードを上から1枚ずつ公開する。その後そのカードをあなたの手札に加える。これにより公開された他のすべてのカードを追放する。
1/1
こいつはヴィンテージで使われたことがある.解散.
http://www.tcdecks.net/deck.php?id=11076&iddeck=80927

55位
Dwarven Pony (赤)
クリーチャー — 馬(Horse)
(1)(赤),(T):ドワーフ(Dwarf)・クリーチャー1体を対象とする。それはターン終了時まで山渡りを得る。(このクリーチャーは、防御プレイヤーが山(Mountain)をコントロールしているかぎりブロックされない。)
1/1
前回もちょっと語ったが,モンスよりましなこいつが排名入りしているのは最弱か最低かという思想の違いによるものだ.

49位
Animal Magnetism / 動物の魅了 (4)(緑)
ソーサリー
あなたのライブラリーのカードを上から5枚公開する。対戦相手1人は、それらの中からクリーチャー・カードを1枚選ぶ。そのカードを戦場に出し、残りをあなたの墓地に置く。
兵は拙グリセルブランドを尊ぶという格言がある.完璧なプレイの末に8マナ貯めてグリセルブランドを出すよりも,多少下手なやり方であっても踏み倒し召喚してしまった方がよいという意味である.さて,動物の魅了が出た当初はクリーチャーが上から下まで弱く,踏み倒しの効力にも自ずと限界があった.しかし,2009~2012年頃,踏み倒し召喚が勝利に直結する怪物が多数現れた.グリセルブランドを何らかの方法で積み込み,動物の魅了をキャストすれば勝てる.これは(そこまで)悪くない取引だ.またSNTの場合,クリーチャーはグリセルブランドとエムラクールが計8枚入っているので,下準備なしの動物の魅了でも,半分以上の確率でそゲームを終わらせる何かが現れる.

43位 Didgeridoo これも先に述べた.

41位 Legend Glyphs
Glyph of Destruction (赤)
インスタント
あなたがコントロールする、ブロックしている壁(Wall)1体を対象とする。それは戦闘終了時まで+10/+0の修整を受ける。このターン、それに与えられるすべてのダメージを軽減する。次の終了ステップの開始時に、それを破壊する。
白と緑は見るも無惨な性能で,排名入りも仕方ない.しかし赤はそこまで酷くはなく,敵を返り討ちにした上で投げ飛ばし,大ダメージを与えることも可能だ(相手を選び,警戒されやすい1:3交換で,殺しきることもできないと見れば相当弱そうだが,バーンのシークレットテクにはなるだろう)

39位
Strongarm Tactics / 力ずくの戦略 (1)(黒)
ソーサリー
各プレイヤーはカードを1枚捨てる。その後これによりクリーチャー・カードを捨てなかった各プレイヤーは、4点のライフを失う。
相手を選べば全く使いようがないという程ではない.ノンクリーチャーコントロール相手には,ディスカードつきの火炎の裂け目/Flame Riftとなる.

36位 フェロッズの封印/Feroz’s Ban これも前に触れた.

29位
Manabond / マナ結合 (緑)
エンチャント
あなたの終了ステップの開始時に、あなたは自分の手札を公開し、その中からすべての土地カードを戦場に出してもよい。そうした場合、あなたの手札を捨てる。
極貧から土地単の皇帝へ.朱元璋のごとき大立者.

9位
Leeches (1)(白)(白)
ソーサリー
プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーはすべての毒(poison)カウンターを失う。Leechesはそのプレイヤーにその数と同じ点数のダメージを与える。
毒カウンターは登場当初,弱すぎて誰も使わなかったので,Leechesも然りであった.ハルクフラッシュでにわかに脚光を浴びることになる毒カウンターだが,これも毒を受ける時には10個以上の急性中毒で死んでいるので,Leechesを使うタイミングがなかった(ソーサリーという遅さもあるが,インスタントだったとしてもまあ変わらんだろう)しかし,青緑感染の登場により僅かながら存在価値が出てきたのは確かだろう.

8位
Mudhole / 泥穴 (2)(赤)
インスタント
プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは、自分の墓地にある土地カードをすべて追放する。
18000wordsの後に登場した,世界のるつぼ,壌土からの生命,聖遺の騎士,探査の対策となり,エルドラージ昇華者を手助けする.排名から逃れることはできないだろうが,8位まではいかないと思われる.

1位
Pale Moon / 蒼ざめた月 (1)(青)
インスタント
ターン終了時まで、プレイヤーがマナを引き出す目的で基本でない土地をタップした場合、それは他のいかなるタイプのマナの代わりに無色のマナを生み出す。
1位はない.おそらく排名10位には入るが,マジック最弱ではない.レガシーのビートダウンにままある基本土地0枚デッキに対しては,1ターン休みとなる.さらにセプターに刻印すればロックとなる.またFoWにピッチできるし,唱えることでストームやメンターのカウントを1つ進めることができる.真の最低とは,このような言い逃れさえも届かない,峻厳な崖のほとりにひっそりと咲く一輪の花である.

ということで24枚ほど挙げてみた.相方を見つけた卡,僕と著者に考え方の差異がある卡(1マナ1/1に何の役にも立たない能力を持った数枚がそれだ),有利な仮定を与えてやればある程度の働きをする卡と色々だが,僕はこの検証を大いに楽しんだ.
http://www.mtgtop8.com/format?f=VI&meta=82

制限前のMUDより強いンゴ・・・
お次は悪名高いホームランドだ.さぞ酷いだろうと身構えていたら,意外にも適正コストより1~2マナ程度の重さに留まる強力卡ばかりで,これぞというのが見当たらなかった.ただし,次の1枚を除いて.
Baki’s Curse (2)(青)(青)
ソーサリー
Baki’s Curseは各クリーチャーに、それぞれそのクリーチャーにつけられているオーラ(Aura)1つにつき2点のダメージを与える。
オーラというのはクリーチャーを縦に伸ばすものだから,ずらっと並んだクリーチャー1体1体にオーラがお供しているといった光景は考えにくい.またオーラは多くの場合タフネスを引き上げるものであり,2点程度では太刀打ちできないおそれが強い.このように,Baki’s Curseはあらゆる面で噛み合わない駄目卡だ.

<改善>
次のような改良版がすでにある.
Aura Barbs / オーラのとげ (2)(赤)
インスタント — 秘儀(Arcane)
各エンチャントは、それのコントローラーに2点のダメージを与える。その後クリーチャーにつけられている各オーラ(Aura)は、それがつけられているクリーチャーに2点のダメージを与える。
これは色が適正になったばかりか,複数のオーラが単独のクリーチャーにつきまくっている状況にも対応できる.またレガシーのエンチャントレスやモダンの呪禁オーラデッキといった特定の相手を即座に殺す力を持っている.素晴らしいデザインである.

これ1枚だけではつまらないので,今回は,このエキスパンションから18000 wordsの挙げた5枚のカードを検証することとしたい.

92位
Sea Troll (2)(青)
クリーチャー — トロール(Troll)
(青):Sea Trollを再生する。この能力は、このターンSea Trollが青のクリーチャーをブロックするか、青のクリーチャーによってブロックされた状態になった場合にのみ起動できる。
2/1
こいつは3マナ2/1以上の性能を持ち,強い.

67位は即ちBaki’s Curseである.

55位
Dwarven Pony (赤)
クリーチャー — 馬(Horse)
(1)(赤),(T):ドワーフ(Dwarf)・クリーチャー1体を対象とする。それはターン終了時まで山渡りを得る。(このクリーチャーは、防御プレイヤーが山(Mountain)をコントロールしているかぎりブロックされない。)
1/1
1マナ1/1の上位互換なので強い.まあ,これはBen Bleiweissと僕の思想の違いだろう,彼が執筆したのはworst cardsの記事であってunderpowered cardsではないから,ろくに使われもしないゴチャゴチャした能力を与えるくらいならバニラのほうを高く取る.翻って僕は単純により弱い卡を探している.

43位
Didgeridoo (1)
アーティファクト
(3):あなたは、あなたの手札にあるミノタウルス(Minotaur)・パーマネント・カードを1枚戦場に出してもよい。
RTR~THSの2年間でミノタウロスは灼熱の時を迎えた.Didgeridooはインスタント・タイミングでボロスの反攻者を呼び出し,7マナに値しない7マナミノタウロス2種を3マナで呼び出すアーティファクトとして,この不名誉ランキングを脱したものと考えて良いだろう.

36位
Feroz’s Ban / フェロッズの封印 (6)
アーティファクト
クリーチャー呪文は、それを唱えるためのコストが(2)多くなる。
ヴィンテージの大会に出よう.相手の5色人間デッキに対して,Big Blueがこいつを修繕で1ターン目に出せば恐らくゲームに勝つだろうし,Staxが2ターン目に6マナ出して唱えても遅くはない.これらは虫が良すぎる仮定だが,全くの絵空事とも言えまい.

というわけでBaki’s Curseという呪われた紙屑を除けば,ホームランドに正真正銘の最底辺はないというのが僕の意見である.
我々はサーペイディア帝国群の廃墟に歩を進める.
Tidal Flats (青)
エンチャント
(青)(青):飛行を持たないクリーチャー1体につき、それのコントローラーはそれぞれ(1)を支払ってもよい。そうしなかった場合、そのクリーチャーをブロックしている、あなたがコントロールするクリーチャーはターン終了時まで先制攻撃を得る。
要は先制攻撃を持たせることでブロックを有利にするエンチャントなのだが,ごちゃごちゃ条件がついているせいで読みづらく,また弱くなっている.

先制攻撃は便利ではあるが格上の相手に対抗できるものではなく,さほど強い能力ではないし,こういう防御的な卡は悪用の恐れが薄い.飛行が対象外というのはフレーバー的理由かと推測もつくが,僅か1マナでの無効化に至っては,何をそんなに怯えているのか不思議な位だ.

<改善>
先制攻撃の色,白にする.すると次の卡が目に入る.
Knighthood / 騎士道 (2)(白)
エンチャント
あなたがコントロールするクリーチャーは、先制攻撃を持つ。
簡潔明瞭なテキストと適切な強さ(構築では見向きもされず,リミテッドでもさほど優先されない)を持つ.非の打ち所のないデザインだ.
Delif’s Cone (0)
アーティファクト
(T),Delif’s Coneを生け贄に捧げる:あなたがコントロールするクリーチャー1体を対象とする。このターン、それが攻撃してブロックされなかったとき、あなたはそのパワーに等しい点数のライフを得てもよい。そうした場合、それはこのターン戦闘ダメージを割り振らない。
この効果は0マナにしても矮小に過ぎるようだ.絆魂/Lifelinkが1マナで永続的なライフ回復をもたらすのに対して,Delif’s Coneは単発であるばかりか,相手にダメージを与えることもできない.しかも,アタックを実施し,本体に当たっている(ビートダウンの側である)にも関わらず,防御的な効果という誤謬をも犯している.いやに物々しいイラスト(http://marktedin.com/FullMagicJpegs/99_DelifsCone.jpg)でコレというのも笑える.

<改善>
色々ダメダメなので,改善法も色々思いつく.下記の中では2.が最もよいかと思う.
1.「そうした場合、それはこのターン戦闘ダメージを割り振らない。」を削る
2.「,Delif’s Coneを生け贄に捧げる」を削る
3.「あなたがコントロールする」を削る(それとともに1マナにする)

フォールン・エンパイアはサリッド等,小テーマを設定したのが功を奏したか,ザ・ダークに比べて極端な弱卡は減った.それでもTidal Flatsみたいなのを作るのにえらく腰が引けていたりと,不慣れさを感じる部分も多い.
ザ・ダーク.暗黒時代に恥じない卡が目白押しである.
Fasting (白)
エンチャント
あなたのアップキープの開始時に、Fastingの上に飢餓(hunger)カウンターを1個置く。その後、それがそれの上に飢餓カウンターが5個以上置かれている場合、それを破壊する。
あなたがドロー・ステップを始める場合、あなたは代わりにそのステップを飛ばしてもよい。そうした場合、あなたは2点のライフを得る。
あなたがカードを引いたとき、Fastingを破壊する。
Farmsteadもまれに見る弱卡だが,それでもプレイヤーに直接的なディスアドバンテージを負わせることはなかった(Farmstead自体が莫大なディスアドバンテージだという批判はひとまず置いておく).その点Fastingはすごい.圧倒的に損な取引を要求して,1度でも断ればたちまち自壊してしまうという厄介者だ.

Fastingは気の遠くなるような時間と多大なアドバンテージ損失の末、最大で8点のライフを与えるわけだが,ライフ回復そのものがそれほど強い所作ではなく,8点程度なら一発で回復できてもバチはあたらないだろう(cf.疲弊の休息/Rest for the Weary).

<改善>
これはもう改善案が出ている.
Words of Worship / 崇拝の言葉 (2)(白)
エンチャント
(1):このターン、次にあなたがカードを引く代わりに、あなたは5点のライフを得る。
Fire and Brimstone (3)(白)(白)
インスタント
このターン攻撃しているクリーチャーを指定したプレイヤー1人を対象とする。Fire and Brimstoneはそのプレイヤーに4点のダメージを与え、あなたに4点のダメージを与える。
火炎の裂け目/Flame Riftと比べて重すぎるというのが1つあるが,それより問題なのは詠唱条件と効果内容の絶望的な噛み合わなさだ.相手が攻撃してきているということは即ちこちらがコントロール側に回っていることを意味する.そして5マナといえばゲームも中盤である.ライフを温存してアドバンテージを取り,ゲームの主導権を奪い返そうという大事な瞬間に,アドバンテージを失いながら自分に4ダメージときたもんだ.これは自殺に等しい.

弁護するなら,白はPW処理が苦手な色であり,登場時に比べればある程度の存在意義は生まれたといえる.

<改善>
もしFire and Brimstoneの効果が本当に必要なのであれば,赤をタッチして火炎の裂け目を使うほうがよい.そこで今回は適正な役割ということで考えてみた.
Fire and Brimstone (3)(白)(白)
インスタント
Fire and Brimstoneは攻撃している各クリーチャーに4点のダメージを与える。
これはスタンダードなら使われる程度の強さになったかもしれないが,それ以上の活躍は望めない.
Deep Water (青)(青)
エンチャント
(青):ターン終了時まで、あなたが、あなたがコントロールする土地をマナを引き出す目的でタップした場合、その土地は他のいかなるタイプのマナの代わりに(青)を生み出す。
青のダブルシンボルまで確保した状態で,こんなエンチャントを使ってまで多量の青マナが欲しい状況というのは相当限定されており,何もしない駄卡として有名だ.しかしそこまで酷いか?という気はする.例えば青単トロンがDeep Waterを使うことで,万の眠りやひずんだ航跡といった卡が劇的に強化され,亜神サイクルを唱えられるようになる.まあ,相当無理があるのも確かで,Deep Waterが青単トロンにもたらす恩恵を全部合算しても卡1枚分の仕事に届かないだろう.しかし,上手く回れば0.6枚分くらいの仕事にはなるのではないか.そして,それは最底辺層からすればかなり頑張っている水準なのである.

<改善>
もうUU出てるだろというのがDeep Waterの一番アホらしい部分なので,そこを直してみよう.
Deep Water (青)
エンチャント
(青):ターン終了時まで、あなたが、あなたがコントロールする土地をマナを引き出す目的でタップした場合、その土地は他のいかなるタイプのマナの代わりに(青)を生み出す。
これなら割と使い道があるように感じないだろうか.マナシンボルを1個落とすだけで強く見えるということは,Deep Waterは(ここで取り扱う中では)マシな方であることの傍証だ.
Erosion / 浸食 (青)(青)(青)
エンチャント — オーラ(Aura)
エンチャント(土地)
エンチャントされている土地のコントローラーのアップキープの開始時に、そのプレイヤーが(1)か1点のライフを支払わないかぎり、その土地を破壊する。
土地破壊としてみた場合,相手はターンごとに1ライフでその土地を戻す権利がある.まことに中途半端である.ダメージ源としてみれば,貫かれた心臓の呪い/Curse of the Pierced Heartより絶望的に劣る.20年も後の,それも色の違う卡を引き合いに出すのはフェアではないかもしれないが,貫かれた心臓の呪いにしてもスタンダード級とはいえなかった卡であり,侵食の弱さが伝わってくる.

<改善>
1マナ軽いブーメランと1マナ重い併合がある.どちらを使うかはデッキ次第.
Hidden Path (2)(緑)(緑)(緑)(緑)
エンチャント
緑のクリーチャーは森渡りを持つ。(それらは、防御プレイヤーが森(Forest)をコントロールしているかぎりブロックされない。)
Aysen Highway (3)(白)(白)(白)
エンチャント
白のクリーチャーは平地渡りを持つ。(それらは防御プレイヤーが平地(Plains)をコントロールしているかぎりブロックされない。)
Aysenはアイスエイジ出身だが,似たようなものだ.変に色拘束が強いので,相手が隠れ道やら高速道路を突っ切ってくるのはほぼ確定で,非常にリスキー.6マナならもっと派手なことをやってもバチは当たるめぇ.

<改善>
こいつらはやりたいことはハッキリしており,単に重すぎるだけだから調整もしやすい.緑ビートのにらみ合いで,Hidden Pathを先に置いたほうが全軍突撃して勝利というようなケースも絶対ないとは言えないだろう.

18000wordsの主張する,一方向だけというのも有力だが,テキストはそのままにダブルシンボル3マナくらいなら強さとして適正になるのではないだろうか.
Sorrow’s Path
土地
(T):ブロックしている、対戦相手がコントロールするクリーチャーを2体選ぶ。それらのクリーチャーのそれぞれが、他方をブロックしているすべてのクリーチャーをブロックできる場合、それらの両方を戦闘から取り除く。その後互いに、片方がブロックしていたすべてのクリーチャーをブロックする。
Sorrow’s Pathがタップ状態になるたび、それはあなたとあなたがコントロールする各クリーチャーに2点のダメージを与える。
この業界ではかなりの大物である.Pathが役立つ状況を考えてみよう.自分の場は「戦いのハルダ(3/3先制攻撃),襞金屑ワーム(8/8)」にSorrow’s Path,相手は「戦いのハルダ(3/3先制攻撃),ツキノテブクロの選別者(2/3接死)」があるとしよう.ここで自分は2体で攻撃を挑み,それぞれ
(自)戦いのハルダ=戦いのハルダ(敵)
(自)襞金屑ワーム=ツキノテブクロの選別者(敵)
とブロックされた.本来なら4体ともが死ぬはずだが,ここでSorrow’s Pathが起動され,ワームがハルダを食い,ハルダが安全な距離から選別者を射抜いた.わずか2点のライフロスで大きな戦果を獲得したわけだ.むろん,上記はあくまで理論上の光景であり,Sorrow’s Pathを見た相手がこんなブロックをするはずはない.もっと言えばSorrow’s Pathを使うプレイヤーがいないのだから,それが戦場に出ることもありえない.

それでもオラクルの変遷によって多少はましになった卡でもある.一時期,ダメージのタップ誘発が効果の一部だったときは本当にどうしようもなかったが,今はタップに付随する誘発型能力となっている.それゆえ,相手に押し付けてリシャーダの港でタップするという戦略は成立する.これは10ターンで相手を倒せるのみならず,そのウィニーを毎ターン滅ぼす攻防一体(笑)の術となる.
策謀者に押し付けの役割を担わせ,Pathを核にしたデッキを考えたこともある.
http://bagupokemon.diarynote.jp/201203261051039191/
(文中に対応して生け贄とあるが,これはルール的に間違いだった.申し訳ない)

<改善>
コールドスナップのクリーチャーにこういうのがある.
Balduvian Warlord / バルデュヴィアの大将軍 (3)(赤)
クリーチャー — 人間(Human) バーバリアン(Barbarian)
(T):ブロックしているクリーチャー1体を対象とし、それを戦闘から取り除く。それがブロックしていた、この戦闘で他のクリーチャーにブロックされていないクリーチャーは、ブロックされていない状態になる。その後、それはあなたが選んだいずれかの攻撃しているクリーチャーをブロックする。この能力は、ブロック・クリーチャー指定ステップの間にのみ起動できる。
3/2
最弱の宝庫オールド・エキスパンションの中でもザ・ダークはピカ一だ.その観察の中で感じたデザイン・デベロップ的知見を列挙しよう.

1.弱い卡というのはマジックに必要である.
2.テキストを長くするなら,相応の意味を持たなければならない.
3.卡をどう使うかの判断はプレイヤーに委ねるべきで,目的外利用をいたずらに抑えつけるべきではない.
4.駄目なレアがあってもいいし,駄目なサイクルもあっていいが,レアで駄目なサイクルを入れるのは避けるべきである.

それにしてもダメダメな連中を見すぎて,従者が強く見えてきた.
RUPPON Michael - 5CC Fish - Top 8 Vintage

Main Deck 60
4 Noble Hierarch
4 Thalia, Guardian of Thraben
4 Scab-Clan Berserker
3 Dark Confidant
3 Mantis Rider
3 Mayor of Avabruck
3 Containment Priest
3 Qasali Pridemage
2 Grand Abolisher
2 Reflector Mage
3 Abrupt Decay
1 Time Walk
1 Ancestral Recall
1 Black Lotus
1 Mox Emerald
1 Mox Ruby
1 Mox Sapphire
1 Mox Jet
1 Mox Pearl
4 Cavern of Souls
4 Gemstone Mine
4 City of Brass
4 Mana Confluence
1 Strip Mine
1 Wasteland

Sideboard 15
1 Grand Abolisher
1 Containment Priest
1 Abrupt Decay
1 Reflector Mage
2 Wasteland
3 Surgical Extraction
3 Stony Silence
3 Izzet Staticaster
Michael Ruppenはスイスラウンドを成績1位で突破し,決勝ラウンドでも3人の強豪達を撫で斬りにして栄冠を手にした.

生物が過半を占めるそのデッキは,徹頭徹尾クリーチャーを尊んでノンクリーチャー呪文を卑しめる思想に基づいている.それでは,パーツ単位で分析してみよう.

1.マナ基盤
4 Cavern of Souls
このデッキの源泉である.2年半前の僕は http://bagupokemon.diarynote.jp/201309130116361913/ において,「魂の洞窟から唱えるためにクリーチャーを入れるという本末転倒を犯すと,デッキも調和を欠き弱くなってしまう」ので,あくまでクリーチャーの補助として使うのが正道であると評した.しかし,その判断は尚早であって,実は魂の洞窟はデッキの核を担うだけの力を持つ卡であることが実証された.自らの不明を恥じ入るとともに,Stormanimagus氏をはじめとする,5色人間を徹底研究して一端のデッキまで大成したプレイヤー達の努力に深く感服するものである.
4 Gemstone Mine
4 City of Brass
4 Mana Confluence
魂の洞窟に続く5色地形.このデッキは色拘束の濃い卡も多いので,5色を淀みなく供給することが重要であり,マナの合流点によって最も恩恵を受けたデッキともいえる.次点は古代の聖塔/Ancient Zigguratか.
1 Strip Mine
1 Wasteland
これらの役割は他のデッキで使う場合と変わりない.すなわち,戦場の優位を固定して敵の反撃を摘む.
1 Black Lotus
1 Mox Emerald
1 Mox Ruby
1 Mox Sapphire
1 Mox Jet
1 Mox Pearl
Moxen.1ターン目にサリアを出すのがこのデッキの勝ちパターンの1つであり,これらの宝石に託された最重要の任務でもある.

2.スペル
3 Abrupt Decay
1 Time Walk
1 Ancestral Recall
魂の洞窟を出発点とし,サリアを4枚投入する5色人間において,スペルであることは相当のハンデである.それを乗り越えて選抜されたこの3種5枚は,さしずめスペル界の状元・榜眼・探花と言ったところか.

3.クリーチャー
4 Noble Hierarch
戦えるマナ・クリーチャーとしての役割が第一であること,彼女を採用する他のデッキと変わりない.しかし,このデッキの土地はいずれも,5色を扱えることの代償としてライフロス等の馬鹿にならないデメリットを抱えているのであり,そういった痛みを生じないマナ基盤という役割も担っていると思われる.
4 Thalia, Guardian of Thraben
最重要の卡であり,デッキ全体の方針に最も合致した卡でもある.伝説という弱点を考慮しても4枚は必然である.
4 Scab-Clan Berserker
いくら5色土地が多いとはいえ,1RRは貴族の教主とも合わず,そうやすやすと払えるコストではない.それを押して4枚投入したことはデザイナーの確固たる意図を示すものであり,また5色人間を優勝に導いた要因でもある.瘡蓋族の狂戦士の攻撃速度は恐ろしく速いため,一種のロックとして機能する.というのは,まず単純計算で,狂戦士が睨みを利かしている限りは8回までしかスペルを唱えられなくなる(横にもクリーチャーがいるだろうし,次ターン以降高名の3/3で殴れるので,実態としては9回よりずっと少なくなる)ことが第一にあり,第二に狂戦士を真っ先に除去せざるを得ない状況に追い込むことによって,他のロック・クリーチャーに対する避雷針的機能を発揮するためである.嗚呼,しかも彼女はその除去にさえも反応し,冥途の土産とばかり,なけなしのライフ2点を奪っていくのだ!
3 Dark Confidant
3 Mantis Rider
3 Mayor of Avabruck
3 Containment Priest
3 Qasali Pridemage
4枚積みのクリーチャーがデッキの方針を決定づけるとすれば,3枚積みのクリーチャーはデッキの力を引き上げ,その厚みを増す存在といえるだろう,上記5種のクリーチャーは,素の卡力が高いものから,メタゲームの産物による登用まで勢揃いであるが,それぞれが異なる役割を担い,しかもデッキコンセプトと齟齬を来さないでいるのは好印象だ.
2 Grand Abolisher
2 Reflector Mage
2枚積みのこれらは,汎用性の点で一歩劣るが,その分ドツボにはまった時の見返りが大きい.

幾分荒っぽいものではあったが,一応の通読を果たした.こういう趣旨をもったデッキは,従来のヴィンテージに全く存在しなかった訳ではないが,メタゲーム上の問題にならない程度には少数派であった.それがここ2年程に加わった新戦力を多く交え,BOMという大舞台で鮮やかな勝利を飾ったことはヴィンテージの新たな息吹を感じさせるもので,いかにも喜ばしい.
GP東京サイドイベント 
http://www.hareruyamtg.com/article/category/detail/2823

RG Belchar
デルバー
グリセルオース
メンター
メンター
ジェスカイの隆盛
デルバー
ドレッジ

BOM
http://www.bazaar-of-moxen.com/en/urlrw,40/main-vintage-decklists,c318.html?event=18&evt=18

5色人間
メンター
メンター
メンター
マーフォーク
MUD
エラヨウ親和
アカデミーベルチャー
http://bazaar-of-moxen.com/fr/coverage,24.html?event=18

https://www.twitch.tv/bazaar_of_moxen

1Ruppen, Michael17 5色人間
2Karlinski, Anton17 メンター
3Mateo, Joan16 メンター
4Beduzzi, David16 MUD
5Richard, Stebbing16 メンター
6Brunel, Camille16 マーフォーク
7Ardoino, Marco16 エラヨウ親和?
8Mayor, Damien16 アカデミーベルチャー

流石にメンターが多いが,割りと幅広いアーキタイプが出揃い,面白いTOP8となった.
今回結果を出した5c人間は最近の卡が多く投入されており,是非とも勉強すべきアーキタイプだ.
http://www.bazaar-of-moxen.com/en/coverage,24/modern-coverage-annecy-2016-top8-decklists,c310.html?event=18&evt=18

エルドラージは鳴りを潜め,ソプターも2名に留まり,モダンはジャンドをはじめカンパニーやバーンといったビートダウンが蟠踞する環境となった.
https://www.twitch.tv/bazaar_of_moxen

参加者は70名前後だそうだ.モダンの裏番組になってしまったのが参加者減につながったか

カバレッジ http://www.bazaar-of-moxen.com/en/coverage,24/vintage-coverage-annecy-2016-top8-decklists,c311.html?event=18&evt=18
グランプリ東京
http://magic.wizards.com/en/events/coverage/gptok16
http://www.hareruyamtg.com/article/category/detail/2790

東京では19年ぶりというグランプリ.そのサイドイベントレガシーの結果が出た.
http://www.hareruyamtg.com/article/category/detail/2806
http://www.hareruyamtg.com/article/category/detail/2804

優勝   奇跡
準優勝  BUG続唱
TOP4  感染
TOP4  奇跡
TOP8  ジャンド
TOP8  リアニメイト
TOP8  オムニテル
TOP8  奇跡

最近,エルドラージの台頭という大事件があったが,やはり最もデッキパワーに優れているのが奇跡であることは揺るぎないようだ.

ここで最も興味あるのはSOIのレガシーに対する影響だろう,はっきりしているのは侵襲手術/Invasive Surgeryがクロックパーミッションのサイドボードに採用されたことだろう,これは奇跡に対して特に有効で,その勝利手段を去ることができる.この他,先駆ける者、ナヒリ/Nahiri, the Harbingerを投入した奇跡プレイヤーもいたようだ.

http://www.bazaar-of-moxen.com/en/index.html

東京から隔たること10000km,Bazaar of Moxenが開催されている.その本戦レガシー結果が出たようだ.

優勝   ベルチャー
準優勝  エルドラージ
TOP4  ANT
TOP4  奇跡
TOP8  グリクシスデルバー(侵襲手術が出ておきながら被覆を使ってる)
TOP8  エルフ土地単(メインデッキ78枚!)
TOP8  ANT
TOP8  BUG氷の中の存在

GP東京を占うため,本戦スタンダードにも目を通しておこう.

グリクシス
アブザンカンパニー
GW
GW
ジェスカイ
バントカンパニー
バントカンパニー
バントカンパニー(優勝?)


そして今日(の日付)は待ちに待った本戦ヴィンテージ.ぜひ見なければ...
https://www.twitch.tv/bazaar_of_moxen
晴れる屋でたぶん誰もが思うこと書くわ
晴れる屋でたぶん誰もが思うこと書くわ
1階の薬局でトーモッドの墓所を連想
晴れる屋
確かに点あるわ
しばらく入れてテストしていたが外した.墳墓のおかげで導師を1ターン早く出せるようになるゲームも確かにある.しかし,これはMox1枚があれば実現できることである.それより,ペイライフや青マナを出せない事故要因の方が大きい.今後は,使うにしてもサイドボード(対Workshop)になるだろう.
蓮を買うため6日午前中に晴れる屋に行くので,よろしくお願いします.
http://magic.wizards.com/en/articles/archive/mtgo-standings/vintage-premier-2016-05-01

TOP16中,メンターが優勝含む7席を占めた.すでに中原はメンターの手中にあり,今後は一族の内紛にステージが移っていくだろう...
メンター概論
本稿ではヴィンテージのメンターデッキを考える.以下,「メンター」と呼ぶ時,それはデッキを指す.「導師」と呼ぶ時,それは卡名を指す.

1.概要

サンプルレシピ:4/24 MO Vintage Daiily 4-0
http://www.mtgtop8.com/event?e=12190&f=VI

メンター/Mentorは,僧院の導師/Monastery Mentorを中核に据えたコントロールであり,2016年4月現在のヴィンテージにおける最強デッキである.強力なドローとテンポに優れたカウンターを両輪に,導師の果敢を大量誘発することをデッキの主題としている(右図参照.マジックデッキ100のデッキメカニズムに倣い,パワポで作った.クオリティの低さを嗤わないでくれ).

2.強み

基本的にはアドバンテージの追求に主眼を置くコントロールであり,その挙動も「ドローしてクリーチャーを並べ,殴る」というごく健全なものである.しかし,従来この手のデッキに搭載されていたクリーチャー,クウィリーオンのドライアド/Quirion Dryadや若き紅蓮術士/Young Pyromancerとは段違いの速度を持ち,それはほとんどコンボの域にまで達する場合もある.僕は,メンターを「アンフェアと呼べるまでに強くなりすぎたフェアデッキ」と捉えている.

骨格が単純なだけあって,幅広い卡を採用する余地がある.例えば,ドローの連鎖という点からストームを連想し,苦悶の触手/Tendrils of Agonyをメインに採用したコンボ色の強いリストがある一方で,石のような静寂/Stony Silence等を使って抑制を図るタイプもある.

また青の強さと白の対応力を併せ持ったことによる,受けの広さも強みである.

3.歴史

導師が収録された運命再編の発売日,2015.1.23が端緒である.14.9.26のタルキール覇王譚発売,それに伴う探査ドローの追加によって当時トップメタを走っていたDelver-Pyromancerデッキの研究によって,デッキの概形が登場時点でほぼ整っていたことから,登場直後から活躍する.

15.7.17のオリジンではヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn’s Prodigyを獲得,2マナ圏を補充してデッキとしての完成度をさらに高める.また,メンター研究の産物として,15年の夏頃から古典卡である森の知恵/Sylvan Libraryを活用するタイプが出始める.

15.10.2のB/R改訂では時を越えた探索/Dig Through Time制限により弱体化するが,DTTは巡航と違って元々枚数を抑えられる傾向にあったこと,メンターに限らず青ならほぼ標準装備といっていい採用率であったことからメタゲーム上大きな不利はつかず,むしろ苦手とする虚空の杯/Chalice of the Void制限による恩恵のほうが大であった.

それ以降はWorkshopに次ぐTier1デッキとして活躍するが,Workshop規制の第二弾である16.4.8の磁石のゴーレム制限により,押しも押されもせぬ最強デッキとしての地位を確立,現在に至る.

4.デッキカラー

右のデッキメカニズムを見てもわかるとおり,必須となる色はUW2色のみである.しかし,実態としては,デッキパワーの向上やサイドボードの拡充のため,大多数のデッキが3~4色で組んでいる(参考:2色メンター http://tcdecks.net/deck.php?id=17990&iddeck=135830).

ここでmtgtop8検索結果を掲載しよう.ヴィンテージのメインデッキにおいて,

Monastery Mentor:129
Monastery Mentor & Tundra:128 (参考 http://qq4q.biz/tAiP)
Monastery Mentor & Volcanic Island:92
Monastery Mentor & Underground Sea:29
Monastery Mentor & Tropical Island:20

以下では,色毎の大まかな役割を概観する.

・白
当然ながら必須.メインデッキでは導師に加えてStPが採用される.ロックの色であるため,サイドボードからアンフェアデッキ,特にオースとドレッジを対策する役割もある.

・青
ヴィンテージにおいて他4色を遠く引き離した最強色であり,デッキパワーの引き上げに必要である.特にドロー最強の色であることから,デッキコンセプトに深く関与している.

・黒
サーチとヨーグモスの意志/Yawgmoth’s Willを加えることで爆発力がさらに向上する.そのはけ口として苦悶の触手を投入するケースもある.

・赤
通例,メンターは赤を3色目に選び,導師の生まれ故郷でもあるジェスカイで組まれる.メインには純然たる強卡であるダク・フェイデン/Dack Faydenを投入.サイドへは,アーティファクト破壊をごっそり積みこむ.

・緑
ヴィンテージのバントデッキとしては,ソフトロック・クロックパーミッションであるNoble Fishの経験がある.が,これがメンターの戦略と合致しないことは明らかで,緑を加える場合,森の知恵やFastbond,古えの遺恨といった個別の強卡が目当てであることが多い.

5.採用卡(メインボード)

メンターのメイン採用卡を役割ごとに分けて紹介する.その採用率に応じて固定(90%~) 定番(50%~)検討(20%~)の3段階に分けた.参考まで,卡ごとの点数評価も付した.

i.土地

メンターの土地に人を驚かすようなギミックはない.その中では,探査・ジェイスのために墓地を肥やせるフェッチランドが重要となる.

<固定>

デュアルランド(6点) - これがなくては始まらない.噴出/Gushの関係上,島であることが重要であり,Plateauを1枚取るというような構築はほとんど見られない.

フェッチランド(6点) - 通常7枚ほど.

島(6点) - 1枚であることが多い.デッキ内のUUは時を越えた探索だけなので,必ずしも2枚以上入れる必要はない.かといって,1枚も入れないと土地破壊に対して脆弱になりすぎる.1ターン目はフェッチ→島→ドローの動きが理想.

<定番>

Library of Alexandria(6点) - 強卡.中盤以降に引いても,噴出を使って無理やり7枚に引き戻してドロー体制を作ることが可能.

露天鉱床/Strip Mine(6点) - 時としてイージーウィンを演出する.他にも,カウンター用のマナを潰したり,LoAや魂の洞窟,またメンターにとって致命的なThe Tabernacle at Pendrell Valeといった能力持ちの土地を破壊するなど,用途は幅広い.

<検討>

トレイリアのアカデミー/Tolarian Academy(6点) - 爆発力は高いものの,事故(アーティファクト0でマナを出さない)要員になってしまうケースもある.下iiで詳しく見ていくが,メンターのアーティファクト枚数は3~10枚と結構幅がある.10枚ならばアカデミーが少なくとも1マナ出すことは期待してよい枚数だし,アカデミーの爆発力で押し切れるゲームもあるだろうが,一方で事故と無縁と言い切れるほどの枚数でもなく,採用の可否はプレイヤー各自の判断に委ねられる.

魂の洞窟/Cavern of Souls(4点) - その性質上,導師自体に関するカウンター合戦は極力避け,一旦表に出てからカウンター合戦に持ち込みたいのがメンターである.魂の洞窟はその我儘を叶えてくれる夢のような土地であり,デッキ内にクリーチャーが4体しかいないのに採用される場合もある.ハマればゲームの明暗を分かつほどの1枚ではあるが,デッキの大半を占めるスペルには対して無色マナしか産まない(1マナ呪文が多いので,実質的に一再寄与していないケースもある)デメリットはやはり無視できるものではない.

不毛の大地/Wasteland(6点) - 露天鉱床に追加して不毛を投入したリストもあるが,土地破壊は露天鉱床1枚のみに留めるものが多い(サイドに追加で不毛を忍ばせるリストもある).基本土地を壊せることに特別な価値を置いているとかそういうわけではなく,土地破壊はデッキの主眼ではないので,最小限に留めるわけである.

ii.マナ・アーティファクト

メンターは構築4フォーマット全てで活躍しているが,最も華々しいのはやはりヴィンテージにおいてであろう.Solomoxenは導師のキャストタイミング自体を早める上に,登場して即座に果敢を誘発させる火種にもなる.この点は大変重要で,たとえ導師本体を除去されようとも,トークンを1体でも産出していればそれが相手に対するプレッシャーとして機能し,アドバンテージとなるのに対し,トークンを残さないで死んでしまったのではテンポを丸々失うだけで,導師を出した甲斐がないのである.

<固定>

Black Lotus(6点)
色の合うMox(6点) - これは入れない理由を探すほうが難しい.

<定番>

色の合わないMox(6点) - デッキカラーと異なるMoxは,Delverなら入れないのが普通だった.メンターの場合,導師が紅蓮術士よりも1マナ重いこと,Moxからもトークンが出ることの2点から,色が合わないものでも相応の意義があり,採用率も80%前後の高水準にのぼる.

Sol Ring(6点)
Mana Crypt(6点) - 2枚の採用率は50%くらいまで落ちる.無色2マナを必要とする卡が少ないからで,爆発力を高めたい場合や精神を刻む者,ジェイス/Jace, the Mind Sculptorをプレイしている場合に採用するといった付き合い方になるだろう.僕の意見を言えば,上記2点の他にも狼狽の嵐合戦やWorkshopとのマッチアップ等,多量マナが活きる機会は多いと思うので,少なくとも色の合わないMoxよりは優先したい気持ちだ.

iii.勝利手段

<固定>

僧院の導師/Monastery Mentor(5点) - 導師に最適化されたこのデッキでの果敢っぷりは素晴らしく,特に妨害がなければ2ターンで大凡勝ってしまうそのスピードは,ダークスティールの巨像/Darksteel Colossusに近い.それも,StPやバウンスを受ければそれで終わりだったDSCと違い,導師は除去されてもトークンを残し,バウンスされても次のターンでまた出てくるのだ.

<検討>

若き紅蓮術士/Young Pyromancer(5点) - 追加の導師として2枚ほど取られる場合がある.

苦悶の触手/Tendrils of Agony(6点) - メンターはドローを次々唱えていくデッキなので,そのエネルギーを導師だけでなくストームにも活かそうとする発想は自然なことである.ただし,黒を加える場合においても触手の投入が当然とは言えず,むしろ珍しい.メンターは1ターンに10の呪文を唱えることを目的としている訳ではなく,むしろ2ターンに分けて4つずつ呪文を唱えようとする方で,同じドロー連打でも若干の違いはある.

龍王ドロモカ/Dragonlord Dromoka(現在点数なし) - 追加フィニッシャー.流石に重いのでバントエスパーでも採用は少数派に留まるが,導師にないものをたくさん持っている.

iv.ドロー・サーチ

寸評も白眉に差し掛かった.ところで,ドローはなぜ重要なのか?一般論としては手数を増やすためであり,このメンターにおいては,果敢を繰り返し誘発させるに最も適した手段だからだ.そしてもう1つ,導師を探すという役割がある.メンターは,導師の力を最大化するため,導師本人のほかは極力クリーチャーを減らし,noncreature spellを増量しようと務める.しかし,それは導師を出せれば一気に押しきれるが,導師が見つからなければ虚しいドローを重ねるだけという状況にも陥りやすい.大量のドローがそれを解決する力を持っていたことは,メンターというデッキにとっての幸いであった.

サーチについて.メンターはそれほど複雑な構造でなく,鍵卡の導師も(今のところは)4枚積めるので,特段サーチを投入する必要に迫られてはいない.よって採用率も低めになるのだが,ドローの派生と考え,ここで扱う.

<固定>

Ancestral Recall(6点)
渦まく知識/Brainstorm(6点)
思案/Ponder(5点)
宝船の巡航/Treasure Cruise(5点)
時を越えた探索/Dig through Time(5点) - このあたりは強すぎて,特段の事情がなければ当然入れるべき卡である.

噴出/Gush(6点) - それほど土地を伸ばす必要がないメンターにとって,土地2枚バウンス程度の代償で2ドローというのはお得すぎるくらい.いつでも唱えられるのでメンターと組み合わさると,全軍強化&ブロッカー生成というコンバットトリックのように機能する(それで実際に相手を返り討ちにするというよりは,相手が警戒してくれるほうが大きい).ルーターと組み合わせることで土地をドローに変換できる等,語り尽くせないほど強い.

<定番>

定業/Preordain(5点) - 思案に迫る強さだが,使わないリストも多少は見られるので定番枠の上澄みあたりに配置しておいた.平均投入枚数は2枚ほどだろうか.

ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe(3点) - このデッキで一番弱い卡.といってもそれは単体での性能であり,メンターにとってはライフ2点の他に何のコストもなく果敢させてくれるのは大変ありがたい.導師が出るまで温存するのはもちろん,フェッチを使い切るまで待ったり,サーチを使う前に使っておいたりして,見返りが少しでも大きくなるよう工夫しよう.

師範の占い独楽/Sensei’s Divining Top(5点) - 採用率は半分強くらい.マナ喰い虫の面があるので,アーティファクトを絞る構成だと敬遠されがちではあるのだが,汎用性と爆発力(ドローのたびに出し直すことで,果敢の誘発回数を倍増できる)を兼ね備えた卡力は魅力.

<検討>

撤廃/Repeal(3点) - 便利卡.自分のMoxを戻して差し引き0マナの2回果敢が強い.上の独楽や下のRemoraとの相性も良い.

Mystic Remora(3点) - ハマれば強いが,噴出との相性が悪いので,考え無しに入れても上手く回ることはないだろう.使うなら,マナファクトは8枚体制とし,撤廃も入れたいところだ.

森の知恵/Sylvan Library(2点) - 緑を加える理由の1つ.ドローを元手に,戦場をメンターとトークンで埋め尽くし,手札をカウンターで武装すれば,残ライフは問題ではない.

商人の巻物/Merchant Scroll(4点) - アンリコ・噴出・DTT・FoWと贅沢なラインナップを楽しめ,果敢にも貢献するが,いささか冗長か.

神秘の教示者/Mystical Tutor(4点) - メンターがいる段階でTime Walkを引いてくることは事実上の死刑宣告を意味するが,単体での性能はやや低め.

Demonic Tutor(6点) - メンターの黒率自体が少ないので検討枠に置くことになったが,逆にエスパーメンターの中では100%近い採用率を誇る.今更語るまでもなく強いので当然か.

吸血の教示者/Vampiric Tutor(5点) - Demonicにはやや劣るが,十分な実力者.

v.カウンター

導師は3マナクリーチャーなのでそれほど重くはなく,また展開から勝利までの間隔も短い.そのため,カウンターについても要所要所を打ち消せれば十分という考え方であり,盤石さよりテンポ性を重視する.

<固定>

Force of Will(6点)
狼狽の嵐/Flusterstorm(5点)
精神的つまづき/Mental Misstep(5点) - 万能選手.

<定番>

紅蓮破/Pyroblast(4点) - 青環境であるヴィンテージでは,色対策の域を越えて汎用カウンターの地位にある.非青デッキに当たったとしてもルーターの多いメンターでは処分に困らないし,最悪,果敢の種に使えるわけだ.そして,紅蓮破の効かないデッキの代表格だったWorkshopは今般の制限で大きく弱体化し,青率は70%を越えた(http://www.mtgtop8.com/topcards?f=VI&meta=82 脱線になるがSapphireの95.8%もすごい数字だな).このことにより,紅蓮破は一層强化されたものと思われる.

<検討>

Mana Drain(5点) - 上記のようなコンセプトの問題,また無色マナをそれほど欲しない実情からすれば最適の卡とは言えない.しかし強いものは強いということか,ある程度実績があるようだ.

呪文貫き/Spell Pierce(4点) - テンポではつまづきに劣り,確実性では狼狽の嵐に劣る.卡力は確かだし,コンセプトにも沿っているのだが,微妙に中途半端な面が災いして定番まではこれなかった.

誤った指図/Misdirection(4点) - 具体的にコレを曲げたい!という仮想敵がある訳ではないが,ピッチだけあってテンポ上は最も優秀.

vi.プレインズウォーカー

プレインズウォーカーがデッキの花型であること,ヴィンテージでも変わりない.プレイヤーの裁量によるところが大きいスロットで,固定枠と呼べるほどの採用率を持った卡はない.爆発力を重視し,1枚も投入しないプレイヤーもいる.

<定番>

ダク・フェイデン/Dack Fayden(5点) - [-2]がイッてるのは御存知の通りだが,[+1]も探査に大きく貢献し,噴出で帰ってきた土地をディスカードに充てられるので強い,

精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor(5点) - マナ域や能力はメンターのコンセプトと若干のズレがあるが,このような純然たる強卡になると,それは不協和音ではなく,むしろデッキの弱点を補う助力者と解される.ジェイスの場合,1枚で勝てるので尚更だ.

ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn’s Prodigy(4点) - メンターにおいて2マナ圏を埋められるのは大きく,4枚採用するデッキもあるほどだ.

vii.除去

どちらかと言えば,相手の妨害よりも自分がやりたいことに重きを置くほうだ.しかし,この部分がしっかりしてないと,デッキ全体が浮足立ったものとなり,安定した勝利を収めることはおぼつかない.

<固定>

剣を鋤に/Swords to Plowshares(4点) - 最強の単体除去で,ストームやドレッジ以外のほとんどのマッチアップに大きく貢献する.確実に勝てる盤面なら,自分のトークンに当てることで果敢を稼ぐのもよし.

<定番>

稲妻/Lightning Bolt(4点) - 手札から出てくるようなクリーチャーは大体これで倒せる.StPと比較すれば,本体やPWにも入る長所を持つ一方,コスト踏み倒しで出てくる巨大クリーチャーに太刀打ちできない.デッキ名で言えば,対メンター(同型)は両者互角,対Vaultも一長一短,対オースはStP有利,対DPSは稲妻有利.

ハーキルの召還術/Hurkyl’s Recall(4点) - 受けが狭いものの,特定の相手(Workshop,修繕)には劇的な効果を発揮することから,元々メイン採用も盛んに行われた卡である.メンターにおいては自らのMoxを戻すことで果敢を大量誘発させるという積極的な役割も担うことができ,なかなか良い.ただ,修繕の漸次的衰退,この度のWorkshop弱体化によって,今後は数を減らしていくと予想する.

<検討>

摩耗+損耗/Wear+Tear(3点) - 軽く,アドバンテージを取れる可能性のある高性能除去.アーティファクト・エンチャント除去としては解呪/Disenchantもサイドボード要員として現役だが,メインから入るのはこっちが主流のようだ.

火+氷/Fire+Ice(4点) - これまた便利な分割呪文.

至高の評決/Supreme Verdict - 同型やDelverに対するサイドボード要員として,早い段階から登場していた卡だが,今やメインからも搭載されつつある.それだけメンターの天下になってしまったということだ.

古えの遺恨/Ancient Grudge(4点) - 色の関係上,使えるデッキが限られているので検討という枠になったが,UWRgメンターなら必ず採用されている.Workshopは減ったものの,適当に唱えて相手を足止めし,後々フラッシュバックで果敢するというストーリーは強力.このデッキに多いルーターで捨てておくのもよい.

viii.その他

上記7コテゴリに分類し難い卡をまとめて配置するものだが,こんな余り物みたいなカテゴリに分類するのが忍びないような強卡ばかりになってしまった.

<固定>

Time Walk(6点) - デッキ最強卡.導師の後で通るとそのままゲームが終わってしまう.

<定番>

瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage(5点) - 両面ジェイスとの互換になる.僕の見立てでは卡力では瞬唱が勝るが,デッキとの相性ではジェイスが一歩リードか.

<検討>

ヨーグモスの意志/Yawgmoth’s Will(6点) - 探査で墓地をガリガリ消費するので,ヨーグモスの意志が持つ稀代の卡力も半分くらいしか出せないことが多い.黒を加えたタイプの中でさえ必須とはいかないようである.

陰謀団式療法/Cabal Therapy(5点) - ギタクシア及びヤンパイとのシナジーを核としたGrixis Delverがレガシーを風靡したことは読者諸賢ご存知の通りである.メンターでも同様の所作ができる.素打ちでは一番困る卡を指定しておき,次のターンでフラッシュバックして全軍強化するという動きも強力だ.

6.採用卡(サイドボード)

具体的な採用卡に加え,マッチアップごとの相性とサイドボーディングの指針も書いたが,ここは僕自身まだまだ経験の足りない部分であり,誤りの記述もあるかもしれない.お気づきのことがあれば,何卒コメント欄にてご教示賜りたい.

採用卡については表にしたほうが見やすいと思い,Excelで作った.http://ur0.work/tEka


i.同型

この試合は導師を残したほうが勝つので,除去を投入する.トークンに弱いPWが抜かれることが多い.

ii.Vault

同じく青をベースとしたデッキだが,デッキパワーと安定性で勝っており,有利.向こうはサイドから全体除去を投入してくるだろうが,メンター側も,ゲームに参加させない(マナ破壊)・勝たせない(墓掘りの檻等)・ゲームを優位に進める(カウンター等)といった色々なサイドプランがある.土地破壊をしてくることはないので,島や色の合わないMoxを抜いてデッキを濃くするのも手である.

iii.オース

最大のライバルにして乗り越えなければならない壁.よほど彼我のドローに差がない限りは1本目は取られてしまうだろう.しかしサイドボードに積んだ対策が非常に強いので,2戦目以降は十分戦えるはずだ.

オースの誘発をスタックに置く→墓掘りの檻/Grafdigger’s Cage等の妨害置物を突然の衰微/Abrupt Decayするという動きが大変強いので,これに耐えられる布陣を用意しつつ,並行して殴りきってしまうのが理想.

iv.ストーム

非常に速く,やや不利.要所に狼狽の嵐を合わせられないとたちどころに負ける.サイドは多少痛みを感じてでも相手の妨害に全力を挙げる.

僕の場合,キープ基準が厳しくなるので,土地は抜かないようにしている.

v.Workshop

メンターにとって自由に動けないのは辛いものだが,導師を出すことさえできればトークンが敵の攻撃を足止めする上,煙突/Smokestackとからみつく鉄線/Tangle Wireの弾除けとなるので,Easy Winさえなければ戦える印象.そのEasy Winも,直近2回のB/R改訂でそう簡単に起きなくなったというわけ.

狼狽の嵐等の無駄なカウンターは勿論,商人の巻物のような重めの卡も抜いて,アーティファクト対策を突っ込む.

vi.ドレッジ

ご存知別ゲー.白には優秀な墓地対策が多いし,豊富なドローで2枚目・3枚目の対策またカウンターを探しに行けるため,静寂にだけ気をつけていれば心配はない.

このマッチアップでは即効性がとりわけ重視されるため,抜くのは探査ドロー(安らかなる眠り/Rest in Peaceを入れるなら特に)やPW,導師(の1枚)あたりが候補となる.

7.まとめ

メンターはただ強いだけでなく,様々な捉え方のできるデッキだ.現在,多くのプレイヤーがメンターをさらに進化させるべく,また逆にこれを倒すべく試行錯誤を重ねており,1つのアイディアが大きなうねりに成長し得る,大変面白い時期に差し掛かっている.メンターがこの先どうなるか,(規制の対象になるかも含めて)見守っていきたい.
レジェンド.Mana Drainを輩出した一方,駄卡の連発でも名高いエキスパンションである.
Glyph of Life (白)
インスタント
壁(Wall)クリーチャー1体を対象とする。このターン、そのクリーチャーが攻撃クリーチャーによってダメージを与えられるたび、あなたはその点数に等しい点数のライフを得る。
Glyph of Reincarnation (緑)
インスタント
Glyph of Reincarnationは戦闘後にのみ唱えられる。
壁(Wall)1つを対象とする。このターン、それにブロックされたすべてのクリーチャーを破壊する。それらは再生できない。これにより死亡したクリーチャー1体につき、その壁によって最後にブロックされたクリーチャーをコントロールしていたプレイヤーの墓地にあるそのクリーチャー・カード1枚をそれのオーナーのコントロール下で戦場に戻す。
初期マジックでは,エルドラージ覚醒並に壁がフィーチャーされていた.レジェンド収録のGlyphサイクルもその一環で,レジェンド特有の長い割には中身の薄いテキストと図抜けた弱さを持つ.その中でも白と緑の2枚は出色の出来である.

改善
これらに卡1枚分の価値はない.壁クリーチャーに内蔵すべき能力である.
Equinox (白)
エンチャント — オーラ(Aura)
エンチャント(土地)
エンチャントされている土地は「(T):呪文1つを対象とする。それがあなたがコントロールする土地を破壊する場合、それを打ち消す。」を持つ。
ものすごくいい感じのイラストだが,卡としては相当にひどい.
1.「呪文がこれから引き起こす効果」をチェックすることはルーリング上問題がある.wikiを見ても混乱ぶりが伝わってくる.
2.使うにはエンチャントした土地自身を立てておかねばならず,土地破壊対策のために自分で土地を縛るという矛盾.
3.土地破壊の本場は土地の起動である.

改善
ハルマゲドン対策になるだけ,雑魚卡の中では役割があるほう.今なら,永遠の土/Terra Eternalや聖なる場/Sacred Groundを使おう.
Great Wall (2)(白)
エンチャント
平地渡りを持つクリーチャーは、それらが平地渡りを持たないかのようにブロックされる。
駄目サイクルの中でもピカ一の存在.平地渡りを持つクリーチャーは4体しかおらず,全てが構築クラスではない.ほか,平地渡りを与える存在としてAysen Highwayがあるが,これまた悪い方に記録的な卡として知られる1枚である.結局のところ,Great Wallが価値を持つのはレジェンド・ドラフトでRighteous Avengersを対策する場合のみに限られる.

改善
Staff of the Ages
Rapid Fire (3)(白)
インスタント
Rapid Fireは、ブロックしているクリーチャーが指定される前にのみ唱えられる。
クリーチャー1体を対象とする。それはターン終了時まで先制攻撃を得る。それがランページを持っていない場合、そのクリーチャーはターン終了時までランページ2を得る。
Rapid Fireが最も輝ける瞬間を考察するために,次のようなシナリオを考えてみる.あなたは5/5のヴィザードリックスを使役し,敵方は残虐無道の群れ(3/3)が1体とあられ石のヒル(1/3)を2体持っているところだ.睨み合いの中,Rapid Fireをトップデッキしたあなたは満を持してヴィザードリックスでアタック,敵は全軍で止める.本来なら倒せるのは残虐無道の群れだけでヴィザードリックスも討ち死にしてしまうところだが,Rapid Fireが炸裂.9/9先制攻撃の怪物と化したヴィザードリックスは残虐無道の群れを噛みちぎり,あられ石のヒル2匹も斬って捨てたかに思えた.ここで対戦相手がジャッジを呼び,Rapid Fireの詠唱タイミング制限を指摘.ゲームはRapid Fireを唱える前まで巻き戻される.ヴィザードリックスと残虐無道の群れを交換し,ヒル2匹が残るという結論となった.

ランページはブロックに誘発する能力なのでこれ以外に書きようもないのだが,詠唱タイミング制限が全てを台無しにしている.こんな見えている,というより見せつけている地雷を目前にした対戦相手は,一番弱いクリーチャーをチャンプブロックに充てるという正しい選択を取って終わりにする.そこにコンバット・トリックの鮮やかな一発逆転,爽快感など欠片もない.

改善
コンバット・トリック(にすらなれてない気もするけど)が4マナというのが間違っているので,軽くする.またランページはあまり良い能力ではないので,その書き直しも必要だ.
Rapid Fire (白)
インスタント
クリーチャー1体を対象とする。それはターン終了時まで、自身をブロックしているクリーチャー1体につき+1/+1の修正を受けるとともに、先制攻撃を得る。
主導権の奪取/Seize the Initiativeの相互互換という感じになった.主導権の奪取と比べれば,2体以上にブロックされた際に修正値が高まる一方,戦闘以外のシーン(本体へダメージが入った際にプレイして1点火力とする,火力に対応してタフネスを1上げる)では劣る.それぞれの頻度を考えれば主導権の奪取の方がやや強いといえるか.元々のRapid Fireに比べれば,まあ3マナ軽くなった...それから,1体のみにブロックされている場合には改善案のほうが勝り,丁度2体にブロックされた場合には同じ働き,そして3体以上だと元のほうが上ということになる.
Cocoon / 繭 (緑)
エンチャント — オーラ(Aura)
エンチャント(あなたがコントロールするクリーチャー)
エンチャントされているクリーチャーは、繭の上に変態(pupa)カウンターが1個置かれている場合、あなたのアンタップ・ステップにアンタップしない。
繭が戦場に出たとき、エンチャントされているクリーチャーをタップし、繭の上に変態カウンターを3個置く。
あなたのアップキープの開始時に、繭から変態カウンターを1個取り除く。そうできない場合、それを生け贄に捧げ、エンチャントされているクリーチャーの上に+1/+1カウンターを1個置き、そのクリーチャーは飛行を得る。(この効果は永続する。)
繭で1枚使い,自軍のクリーチャーを3ターンの間失う.そして得られるのが+1/+1修整と飛行.なんか間違ってないか?

ちなみに青の1マナオーラで+1/+1修整に飛行を与えるものは,意外にもJOUで出た惑乱のセイレーンが初である.

改善
難しいが,エンチャント(クリーチャー)にしてはどうだろう?
強すぎ?
Cathedral of Serra
土地
あなたがコントロールする白の伝説のクリーチャーは「他の伝説のクリーチャーとのバンド」を持つ。
言わずと知れたバンド土地.マナは出ないわ,伝説に限定されてるわ,バンドという能力自体が弱いわで散々である.

改善
案の1つは,18000 wordsの提唱するこれだ.
伝説の地
伝説の土地
(タップ):あなたのマナ・プールに無色のマナ1点を加える。
(タップ):レジェンド1体を対象とする。それは、ターン終了時までバンドを得る。
完璧なデザインと言える.蛇足を承知で私案を付け加えるとすれば,サイクルの各土地に対応する基本土地タイプを付与するのはどうだろうか.おそらく不毛の大地その他特殊地形対策を受けるデメリットのほうが,バンドのメリットよりはるかに高くつくと思う.
North Star (4)
アーティファクト
(4),(T):このターン、呪文1つについて、その呪文のマナ・コストを支払うのに、マナを他の色のマナであるかのように支払ってもよい。(追加コストは通常通り支払う。)
一種のマナフィルターだが,実際の運用までに8マナという怒涛の重さが目を引く.これを使う機会というのは大量の無色or単色マナを基に色拘束の強い卡を使いたい,という場合になろうかと思うが,何しろNorth Star自体がハンパなく重いので「大量」といっても生半可なマナでは使い切れない.

例えば,ウルザランドが揃って7マナ出るとしよう.North Starを起動すれば残り3マナでFarmstedやスゥルタイの隆盛,Ragnarといったトリプルシンボル呪文を自由に使役できる...できるが,これは虹色の前兆(2マナエンチャント)を張って各ウルザランドから色マナを捻出するのと変わらない.しかも,虹色の前兆なら起動型能力のコストや,Fire and Brimstoneをはじめとする5マナダブルシンボル,引き込み/Pull Underを筆頭とした6マナシングルシンボルのような卡にも対応できるわけで,ウルザランドが揃った場合という相当都合の良い仮定においてすらNorth Starの分が悪い.

そうなると,これが本当に役に立つシーンというのは,クリーチャーを大量展開した後のガイアの揺籃の地から彩色マンティコア/Chromanticoreを出すとか,アーティファクトをずらずら並べたアカデミーで尊原初/Primalcruxを出すとか,そういうアホらしいケースしか思いつかない.

改善
North Star (2)
アーティファクト
(T):このターン、呪文1つについて、その呪文のマナ・コストを支払うのに、マナを他の色のマナであるかのように支払ってもよい。(追加コストは通常通り支払う。)
虹色の前兆がパワーレベルとして適正であることを考えれば,North Starはこんなもんか.


この頃のデザインにはいくつか特徴がある.
1.オーラ及びそれに付随する効果が極めて多い.
2.色変更に関する効果が極めて多い.
3.直感を大変重視している.恐怖はその代表格だろうし,Lesser Werewolfみたいなのもある.このあたりはマジックとTRPGが未分離だった名残だろうか.

レジェンドは駄目な卡がサイクルを成したことにより枠を大幅に削っていたり,目玉のはずの伝説クリーチャーたちが何の変哲もないバニラだらけだったり,あまり面白いセットではないというのが正直なところだろう.しかし今のマジックがこれほど完成度を高めているのも,草創期の経験が土台になっているわけで,最弱の探求を通して太古のエキスパンションを概観するのにも相応の意味があるものと信じている.
http://magic.wizards.com/en/articles/archive/mtgo-standings/vintage-daily-2016-04-18

流石になんか手を打ったほうがいいだろこれ!

でもヴィンテージでギデオンってのは面白いチョイスだな.あとエルドラージデッキがとうとう出てきたのも良い.色々研究されながらも何故か実績がなかったエルドラージだが,純粋なビートダウンとして定着するのだろうか,注視していきたい.

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