B/R改訂以降のヴィンテージメタ
2017年6月9日 Magic: The Gathering
0.序
4月24日、メンターの抑制を目的として2枚の卡が制限された。ギタクシア派の調査と噴出だ。このフリースペルはメンターの攻撃力を大いに高めていた卡であり、その汎用性や卡力の点からいっても制限は妥当であった。今回は、この制限が与えた影響を振り返るものとしたい。
1.制限直前のメンター
http://mtgtop8.com/event?e=15282&d=292876&f=VI 4月15日
メンター・サイレンスと呼ばれるタイプが主流であった(従来ストーニー・メンターと呼んでいたが、一般的な呼称に変更)。石のような静寂/Stony Silenceは、トップメタである歩行バリスタ/Walking BallistaタイプのWorkshopと逆説ストームの両者を強く対策する。これによってビッグプレイ(逆説的な結果/Paradoxical Outcomeによる大量ドローやバリスタによる除去)をお互いに封じつつ、自分自身はアーティファクトの枚数を減らすことでデメリットを小さくし、噴出とギタクシア派の調査の持つ爆発力を活かす設計である。
メンター・サイレンス自身は僧院の導師登場直後から組まれていたデッキだが、このようにメンターの標準形にまで台頭したのは、機体の参戦を受けた2016年11月以降のことである。mtggoldfishによれば、2016年11月1日から制限改訂日までの支配率は次のとおりでありメンター・サイレンスが環境トップメタの一角を担っていたことがわかる。
http://mtgtop8.com/event?e=15258&d=292700&f=VI
2.制限後のメンターの変革
右図はmtggoldfish調べの噴出・ギタクシア採用枚数である(時間の使い方...)。これらの合計枚数を見てみる。全591デッキだから、平均をとれば合計4.9枚=噴出2.8枚+ギタクシア2.1枚。しかし最頻値としては、合計6枚採用が最も主流である。したがって、今回の制限によって、メンターは平均約3枚、実感としては約4枚のスロット欠落を被ったといえる。
その後継として急浮上している卡が2枚ある。商人の巻物とSol Ringである。
商人の巻物:
近年こそテンポがやや遅い点が響いて採用率が落ちていたものの、元々Big Blueの定番卡であったなど、実力は高い。これを経由することでテンポよく噴出に繋いでいくことができる上、Ancestral Recallを筆頭に、選択肢は充実している。ヴィンテージの権威であるStephen Menendianがいち早く発見し、制限翌日のMOを4-0したことでメンターの健在を見せつけた(下記事)。現在ではメンターの基本パーツの地位を確固たるものとしている。
http://bagupokemon.diarynote.jp/201704272314434365/
Sol Ring:
説明不要の超強力卡であるが、メンターでは無色2マナを欲する卡がほとんどない(導師のほか、必須ではない探査2枚)ため、入らないことが多かった。しかしながら、制限後、Sol Ringとやや重い卡を用いてアドバンテージを重視するタイプのメンターが登場した。重い卡とは、強迫的な研究/Compulsive Researchや神ジェイス等。中には神チャンドラを起用したものもある。従来、「土地2枚置く→3ターン目に噴出→土地出し直して3マナ」という動きにより土地2枚で3マナを捻出することができた(導師自体、その恩恵に預かる1枚である)が、この方法だと4マナ域へのアクセスは遠のいてしまう。噴出が制限されて初めて出てきたデッキといえる。
http://mtgtop8.com/event?e=15422&d=293879&f=VI
3.メタゲームへの影響
https://www.mtggoldfish.com/metagame/vintage#paper
このような厳しい制限にもかかわらず、メンターとWorkshopがTier1を張り、ずっと下にTier2が連なる現状に変わりはなかった。しかし、その内実は大きく変化している。
i.Workshopの後退
制限された2枚はいずれも青に対して強く、Workshopに対して弱いものであった。これをズバリと言い当てたのがKai Buddeのツイートだ。
ii.2トップの支配力低下
Tier1の二頭体勢とはいえ、両者とも占有率20%を割っている。メンターは単純に弱体化し、Workshopは右の理由からそれに引きずられた。
iii.Big Blueの復権
5%弱ではあるが、一時期からはだいぶ持ち直した。
Big Blueは、噴出メンターに速度・安定性・アドバンテージいずれにおいても劣り、メタ上の強みが無かった。今回の制限でメンターがややパワーダウンしたため、ある程度メタに食い込む余地が生まれたようだ。
また、アモンケットによる影響も、これらを後押ししたことは想像に難くない。
・力ずく/By Forceによるアーティファクトのマスデス
・過酷な指導者/Harsh Mentorによる青赤デルバーの復権
この観察を通して、個々の卡やデッキの活躍度合いを左右するのは、それ自体のパワーよりもメタゲームの推移であることを学べた。大鍋兄貴の論考に感服の意を表する。
http://shootinglove.diarynote.jp/201701300140576547/
4.今後の展望
メンターとWorkshopの睨み合いを打破する機運はないかと考えてみる。今や大歓楽の幻霊まで投入するに至った青赤デルバーは、メンターとWorkshopの双方に痛烈な対策をもったデッキだ。今すでにTier2のトップ近くにいるが、今後さらに伸びてくる可能性があるのではないだろうか。
4月24日、メンターの抑制を目的として2枚の卡が制限された。ギタクシア派の調査と噴出だ。このフリースペルはメンターの攻撃力を大いに高めていた卡であり、その汎用性や卡力の点からいっても制限は妥当であった。今回は、この制限が与えた影響を振り返るものとしたい。
1.制限直前のメンター
http://mtgtop8.com/event?e=15282&d=292876&f=VI 4月15日
メンター・サイレンスと呼ばれるタイプが主流であった(従来ストーニー・メンターと呼んでいたが、一般的な呼称に変更)。石のような静寂/Stony Silenceは、トップメタである歩行バリスタ/Walking BallistaタイプのWorkshopと逆説ストームの両者を強く対策する。これによってビッグプレイ(逆説的な結果/Paradoxical Outcomeによる大量ドローやバリスタによる除去)をお互いに封じつつ、自分自身はアーティファクトの枚数を減らすことでデメリットを小さくし、噴出とギタクシア派の調査の持つ爆発力を活かす設計である。
メンター・サイレンス自身は僧院の導師登場直後から組まれていたデッキだが、このようにメンターの標準形にまで台頭したのは、機体の参戦を受けた2016年11月以降のことである。mtggoldfishによれば、2016年11月1日から制限改訂日までの支配率は次のとおりでありメンター・サイレンスが環境トップメタの一角を担っていたことがわかる。
全デッキ 670この時期のサイレンス以外のメンターとしては、Remoraタイプが挙げられる。
メンター 165 24.6% ※僧院の導師が3枚以上入っているものはメンターとした
内サイレンス 124 18.5% ※メイン・サイドに1枚以上石のような静寂があるもの
Workshop 169 25.2%
http://mtgtop8.com/event?e=15258&d=292700&f=VI
2.制限後のメンターの変革
右図はmtggoldfish調べの噴出・ギタクシア採用枚数である(時間の使い方...)。これらの合計枚数を見てみる。全591デッキだから、平均をとれば合計4.9枚=噴出2.8枚+ギタクシア2.1枚。しかし最頻値としては、合計6枚採用が最も主流である。したがって、今回の制限によって、メンターは平均約3枚、実感としては約4枚のスロット欠落を被ったといえる。
その後継として急浮上している卡が2枚ある。商人の巻物とSol Ringである。
商人の巻物:
近年こそテンポがやや遅い点が響いて採用率が落ちていたものの、元々Big Blueの定番卡であったなど、実力は高い。これを経由することでテンポよく噴出に繋いでいくことができる上、Ancestral Recallを筆頭に、選択肢は充実している。ヴィンテージの権威であるStephen Menendianがいち早く発見し、制限翌日のMOを4-0したことでメンターの健在を見せつけた(下記事)。現在ではメンターの基本パーツの地位を確固たるものとしている。
http://bagupokemon.diarynote.jp/201704272314434365/
Sol Ring:
説明不要の超強力卡であるが、メンターでは無色2マナを欲する卡がほとんどない(導師のほか、必須ではない探査2枚)ため、入らないことが多かった。しかしながら、制限後、Sol Ringとやや重い卡を用いてアドバンテージを重視するタイプのメンターが登場した。重い卡とは、強迫的な研究/Compulsive Researchや神ジェイス等。中には神チャンドラを起用したものもある。従来、「土地2枚置く→3ターン目に噴出→土地出し直して3マナ」という動きにより土地2枚で3マナを捻出することができた(導師自体、その恩恵に預かる1枚である)が、この方法だと4マナ域へのアクセスは遠のいてしまう。噴出が制限されて初めて出てきたデッキといえる。
http://mtgtop8.com/event?e=15422&d=293879&f=VI
3.メタゲームへの影響
https://www.mtggoldfish.com/metagame/vintage#paper
このような厳しい制限にもかかわらず、メンターとWorkshopがTier1を張り、ずっと下にTier2が連なる現状に変わりはなかった。しかし、その内実は大きく変化している。
i.Workshopの後退
制限された2枚はいずれも青に対して強く、Workshopに対して弱いものであった。これをズバリと言い当てたのがKai Buddeのツイートだ。
#vintage changes: these restrictions will likely make mentor BETTER overall. restricted cards are good in mirror, bad against anti-mentor.この制限によって、メンターのデッキパワー絶対値は低下したが、Workshopとの相性差は改善された。差し引きで、勝敗率は制限前から大差ないようだ。こうして公式の狙いは見事成功した。
うまく行けば《僧院の導師》デッキの「フリー」スペルを取り除くことで《Mishra’s Workshop》のさまざまな《抵抗の宝珠》効果の影響が減少し、メタゲームが開けるでしょう。
ii.2トップの支配力低下
Tier1の二頭体勢とはいえ、両者とも占有率20%を割っている。メンターは単純に弱体化し、Workshopは右の理由からそれに引きずられた。
iii.Big Blueの復権
5%弱ではあるが、一時期からはだいぶ持ち直した。
Big Blueは、噴出メンターに速度・安定性・アドバンテージいずれにおいても劣り、メタ上の強みが無かった。今回の制限でメンターがややパワーダウンしたため、ある程度メタに食い込む余地が生まれたようだ。
また、アモンケットによる影響も、これらを後押ししたことは想像に難くない。
・力ずく/By Forceによるアーティファクトのマスデス
・過酷な指導者/Harsh Mentorによる青赤デルバーの復権
この観察を通して、個々の卡やデッキの活躍度合いを左右するのは、それ自体のパワーよりもメタゲームの推移であることを学べた。大鍋兄貴の論考に感服の意を表する。
http://shootinglove.diarynote.jp/201701300140576547/
4.今後の展望
メンターとWorkshopの睨み合いを打破する機運はないかと考えてみる。今や大歓楽の幻霊まで投入するに至った青赤デルバーは、メンターとWorkshopの双方に痛烈な対策をもったデッキだ。今すでにTier2のトップ近くにいるが、今後さらに伸びてくる可能性があるのではないだろうか。
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