レガシーに関してはそうでもなくなってきたが,ヴィンテージに対してはいまだ「1キル2キルのはびこる狂ったフォーマット」という認識が根強い.今回,ヴィンテージを象徴するSolomoxenにフォーカスし,この疑問に僕なりに答えてみたいと思う.

Mox5枚ににSol Ring,Mana Crypt,そしてBlack Lotusを加えた8枚の強烈なマナ・アーティファクトが,ヴィンテージを超高速環境たらしめているという見方がある.だが,ここでレガシーに視線を移してみよう.このフォーマットではまず,ヴィンテージで制限を食らっている水連の花びらとライオンの瞳のダイアモンドがいずれも野放しにされており,さらに暗黒の儀式・モックス・ダイアモンド・金属モックス・指導霊を詰め込む事が可能だ.ヴィンテージは確かに高速のマナ加速に溢れたフォーマットだが,レガシーでもそれと同等の加速力を手にする事は十分可能なのである.実際それをやって1ターン目7マナ到達をコンセプトとするベルチャーのようなデッキも設計されているが,レガシーの中原を制するのはこうしたピーキーなデッキではなく,タルモゴイフや石鍛冶の神秘家,あとニューカマーの真の名の宿敵といった中速志向のクリーチャーである.ヴィンテージもまた然りで,マナブーストに物を言わせた超速デッキというのは構築し得るが,勝っているのは安定性を重視したデッキの方だ.その理由は簡単で,Force of Willという最高の抑止力もまた,両フォーマットで4枚リーガルだからである.

では,Moxenとは何なのか?僕の考えはこうだ.多くのデッキにとって,それは文字通りの意味,つまり複数プレイ可能な土地(!)である.多くのBig Blue(コンボを搭載したコントロールデッキを僕はこう勝手に総称している)にとって最序盤の仕事は相手を殺す事ではなく,何らかの形でアドバンテージを取って相手側のそれを妨害する事である.それには使用可能なマナ量で先行してしまって相手に打ち消すだけのマナを準備させないのが上策であり,Moxの使い道もまさにそれなのである.標語的に言えば,Moxを暗黒の儀式ではなくて小型のTime Walkとして活用している.Big Blueをプレイするほとんどのプレイヤーが,上に挙げた水蓮の花びらを制限の1枚さえも投入していない事も,この裏付けとなるだろう.この話も,レガシーに置き換えて次のように説明できる.4ターン目にあなたはジェイスをプレイするかもしれないし,タルモゴイフを2体出す手もあり,カウンターを構えながら石鍛冶の神秘家を起動することだって可能だ.いずれも非常に強力なプレイである,だがそれで対戦相手が即死するのかと言われれば,そうではない.

無論,時にはこれらのマナ・アーティファクトが凶器となり,先攻1ターン目のコンボに瞬殺されてしまう事もある.だが,その可能性は相当に低く,さっき言ったBig Blueなら100回に1回程度の出来事である.その恐怖感と緊張感は例えるなら適量のスパイスのようなもので,料理の味を挽きたてこそすれ,台無しにする類のものではない.

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