0.本稿における用語

Sphere:呪文のコストを増加させる能力。抵抗の宝球、アメジストのとげ、三なる宝球、磁石のゴーレム。
Workshop:専らアーキタイプをいう。卡については正式名称Mishra’s Workshopと呼ぶ。

1.序

Workshopの支配率は36%に達した。これは磁石のゴーレム制限前に肩を並べる数字であり、制限は不可避の情勢となった。そこでWorkshopのパーツを個別に評し、制限の可能性を追求してみたい。

2.検証基準

・強さ
・採用数(入れるとすれば何枚か)
・採用率
・面白さ/不快さ
・制限による他アーキタイプへの影響(※)
・技量を反映する度合い

※ 公式はこれをB/R選定基準に含めている。 http://mtg-jp.com/publicity/0016665/

以下、卡名右の()内に僕の判断による点数を入れた。
6点-常軌を逸した強卡達.多くのデッキで使用が当然視される,メタデッキを作り上げた存在である,それの為だけに色をタッチされる,といった力量を備える.殿堂的な枠として定めたので,恐らく今後のセットで6点を得る卡はほぼないだろう.

5点-ヴィンテージの主役級の卡であり,メタゲームやプレイングを変動させうる存在.それを標的とした対策卡を積まれるレベルの影響力,存在感を示す.

4点-有力なアーキタイプや複数のアーキタイプにおいて大きな役割を果たす卡.または有力なアーキタイプに対する特に有力な対策卡.

3点-有力なアーキタイプにおいて使用を検討される卡.または特定のアーキタイプで大きな役割を果たす卡.

2点-使われることはあるが遭遇率は3点より低い卡.またはサイドボードにおいて使用を検討される卡.

1点ー活躍の可能性が残されている卡.かつて実績があったが,現在使われていない卡.

0点-卡力が低くヴィンテージにおいては存在しえない.
またmtggoldfishを参考に、大凡の採用枚数*採用率を記す。
卡名左の☆はすでに制限されている卡。

3.デッキタイプの確認

各論に入る前にWorkshopというアーキタイプの中のデッキタイプには何があるかを確認しておきたい。現在主流なのは次の2デッキタイプだ。

・Ravager Shop - 約90%を占め圧倒的多数。電結の荒廃者を中心に据え、鋳造所の検査官や歩行バリスタ、場合によっては拘束警備車といったカラデシュ・ブロックの戦力を活用する。

・Eldrazi Shop - 10%ほどだが今後伸長する可能性もある。磁石のゴーレムの制限された穴を難題の予見者で埋める試みとして一時試されていたものの、カラデシュ・ブロックを受けたRavager Shopの台頭により忘れ去られていた。しかしMOの英雄Thiimが、現実を砕くものというコロンブスの卵によりMO Challengeを見事優勝してのけたため(http://magic.wizards.com/ja/node/1185346)復権。

この他、かつて存在したものの今は下火となった・淘汰されてしまったデッキタイプとしては次が挙げられる(上ほどアグロ性が強い)。

・Cat Stax
・親和
・Kuldotha MUD
・Terra Nova
・Stax

4.各論

i.マナ

☆Black Lotus(6点) 1*100%


☆Mana Crypt(6点) 1*100%


☆Sol Ring(6点) 1*100%


☆Mox Emerald(6点) 1*100%


☆Mox Jet(6点) 1*100%


☆Mox Pearl(6点) 1*100%


☆Mox Ruby(6点) 1*100%


☆Mox Sapphire(6点) 1*100%


Mishra’s Workshop(6点) 4*100%

全ての根源である。制限卡も(おそらくはPower9も)含めたデッキ内で一番強い卡だが、制限されていない。なぜならMishra’s Workshop制限は同名のアーキタイプそのものの死を意味するためだ...
私たちは、不均衡なメタゲームを監視し続けています。特に、《Mishra’s Workshop》系のデッキは今でもかなり多すぎ、トーナメントのメタゲームを破壊しています。この問題はその名前となっているカードを禁止することで解決できるかもしれませんが、私たちは可能ならばそのデッキをトーナメント・レベルに保ち、一方でその頻度はフォーマットがより多様性を持つ程度にしたいと思っています。《磁石のゴーレム》は、一方的なゲームを引き起こしています。このカードが《Mishra’s Workshop》デッキに1枚しか入らないようにすることで、デッキの強度は適当なレベルまで引き下げられることを期待しています。この理由から、《磁石のゴーレム》を制限します。
...との公式見解に同調し、「ヴィンテージ制限リスト考」ではそれに従う主張を述べた(http://bagupokemon.diarynote.jp/201707081553575001/)。しかし、今ではMishra’s Workshopを制限しても、アーキタイプへの影響は大幅弱体化に留まり、崩壊までは行かないのではと思っている。

考えてみれば、今でさえ、Workshopが初手にMishra’s Workshopを引ける確率は40%に満たない。しかし、プレイヤーはMishra’s Workshopが無かったからといってドレッジのように即マリガンする訳ではなく、古えの墳墓とMoxenで構築したマナ基盤をもとに戦う。Mishra’s Workshopのない初手は望ましくはないにしろ特別に不利でもなく、十分に戦えるものだ(そうでなければ、そもそも36%もの支配率を確保することなど到底できないだろう)。このことはメンターと比較してみると一層よくわかる。メンターも僧院の導師の不在を理由にマリガンすることはないが、最終的には膨大なドローによって導師を見つけ、それで勝つデッキだ。僧院の導師が制限になり、安定して引き当てることが不可能となれば、デッキとしての形は保てなくなるだろう(若き紅蓮術士による代替は可能だが、それなら紅蓮術士に最適化されたクロックパーミッションを組めばよい)。Mishra’s Workshopには、こういった事情は当てはまらない。
また、「オースはなぜ勝てなかったのか」(http://bagupokemon.diarynote.jp/201708080147305457/)で述べたとおり、ロックからストンピィへの方針転換が進むWorkshopは、かつてほど大量のマナ供給を必要としていない。ロックの場合、相手の拘束を最優先とし、その拘束を受けた上で自分のクリーチャーを召喚する必要があるため、潤沢なマナが不可欠だが、ストンピィではクリーチャーを優先的に展開し、相手にフタをする形で拘束を仕掛ければよいので、そこまでのマナはいらない。
個別の卡を見ても、カラデシュで追加された2体の影響は大きい。
鋳造所の検査官 - 1ターン目の展開として理想的であり、コスト全てを軽減してくれる。
歩行バリスタ - トリスケリオンの大幅な軽量化版。

以上のことから考えて、Workshopが制限されたとしても、ストンピィへ一層傾斜させる形でデッキコンセプトは保たれると考えている。それに、他のアーキタイプへの影響も小さい。

とはいえ、その圧倒的な生産力は、ヴィンテージの象徴とも言える。できればMishra’s Workshopそのものは残した解決を見たいところだ。


古えの墳墓/Ancient Tomb(5点) 4*100%

ライフと引き換えに使用制限のない2マナを供給してくれる、登場以来常に一線級にある土地である。しかし、アーティファクトオンリーのこのデッキではMishra’s Workshopの下位互換である。勝るのは次の3シーンに限られる。
1.エルドラージや四肢切断等、非アーティファクト呪文の詠唱
2.起動(カーン等。最近では歩行バリスタ)
3.呪文貫き、カタキ、エネルギー流出等、相手が課してきた追加マナの支払い

Workshop以外でも、エルドラージや面白いところではWorkshop対策としてストーム系がサイドボードに積む等、採用デッキは多い。これを制限してしまうと、そうしたデッキへも大打撃を与えてしまう。


裏切り者の都/City of Traitors(3点) 2*9%

瞬間的に2マナ伸ばしてくれるが、次ターンのセットランドで失われるので、2ターン後からはむしろ減速してしまうデメリットを持つ。

固定パーツの地位を次第に追われてしまった卡だ。その理由として2つ推測していることがある。何はともあれ検討材料として2つのデッキリストを供しよう。7年前のと今のだ。
BOM4 1st - Fabian Moyschewitz
4 Triskelion
4 Lodestone Golem
4 Metalworker
3 Karn, Silver Golem
4 Tangle Wire
4 Chalice of the Void
4 Sphere of Resistance
4 Thorn of Amethyst
2 Sword of Fire and Ice
1 Black Lotus
1 Sol Ring
1 Mana Crypt
1 Mana Vault
1 Mox Emerald
1 Mox Jet
1 Mox Sapphire
1 Mox Ruby
1 Mox Pearl
1 Tolarian Academy
2 Mishra’s Factory
2 City of Traitors
4 Wasteland
1 Strip Mine
4 Mishra’s Workshop
4 Ancient Tomb
MO Challenge 08/12/2017 1st - DAZAI
Creature (24)
4 Arcbound Ravager
4 Foundry Inspector
1 Lodestone Golem
3 Phyrexian Metamorph
4 Phyrexian Revoker
4 Precursor Golem
4 Walking Ballista
1 Black Lotus
1 Chalice of the Void
1 Mana Crypt
1 Mox Emerald
1 Mox Jet
1 Mox Pearl
1 Mox Ruby
1 Mox Sapphire
1 Sol Ring
4 Sphere of Resistance
4 Thorn of Amethyst
1 Trinisphere
4 Ancient Tomb
4 Mishra’s Factory
4 Mishra’s Workshop
1 Strip Mine
1 Tolarian Academy
4 Wasteland
推測の第1は単純に軽量化したことで、双方のbusiness部分のコストを合計してみると、前者が101、後者(歩行バリスタはX=1換算)が88となる。それゆえ、デメリットを背負ってまで裏切り者の都を入れる理由が乏しくなったのではないかというものだ。

推測の第2は、ミシュラの工廠の強化だ。2つのデッキはいずれも土地に18枚を割いており、7年前のデッキから裏切り者の都が抜けた2枚分をそのままミシュラの工廠の増量に充てた格好である。そして、工廠の強さは電結の荒廃者と一蓮托生の関係にある。電結の荒廃者は、磁石のゴーレムの登場直後こそFabianのデッキのように不採用のものが増えたが、天敵ダク・フェイデンが現れると、有力な回答として見直され、そして磁石のゴーレムが制限されたことで固定パーツの座に復帰した。電結の荒廃者は、土地ゆえの除去耐性を備えたミシュラの工廠と相性が良い。クリーチャー全てを工廠に託し、オースや突然の衰微、ダクといった妨害を素通りして相手を殴り倒すプレイも可能だ。

そういうわけで今ではあまり見られなくなってしまった裏切り者の都だが、使うデッキはちゃんとある。それはEldrazi shopで、アーティファクト・エルドラージ双方に活用できる貴重なマナベースとして、工廠より優先して採用される。

とはいえ、主流は鋳造所の検査官から電結の荒廃者・歩行バリスタにテンポよく繋いでいくRavager Shopであることに変わりはなく、これも制限の可能性はない。


ミシュラの工廠/Mishra’s Factory(5点) 4*90%

隆盛の原因(と僕が推測するメタ動向)を簡単に復習すると、

ダク登場→対策として電結の荒廃者台頭→好相性の工廠隆盛

Eldrazi Shopを除いたデッキではまず4枚採用されるようになった。Workshopの中でも特に工廠にフィーチャーしたタイプにTerra Novaがある。今では下火になっているが、工廠4枚に変わり谷まで投入し、無のロッドをも投入した一段と強固なロックの下から殴る戦略は高い完成度を持つ。

歴戦の強卡だが、制限したところで変わり谷が3枚入るだけで、弱体化としては誤差に近いものである(流石に変わり谷まで制限はありえないだろう)。また、同じくミシュラの工廠を鍵卡とするデッキにはランドスティル等もあり、巻き添えが気になる。


☆露天鉱床/Strip Mine(6点) 1*100%


不毛の大地/Wasteland(6点) 4*100%

お互いの土地を1枚減らすことは、ターンの経過を1ターン巻き戻すことだ。それは盤面の脅威に対して回答側が必要とするマナへの到達を遠ざけ、その時点での戦況を固定する効果を持つ。しかし不毛をもってしても、「1ターン目の挙動」すなわち手札から土地をセットして即座にキャストされる1マナ呪文(ソープロ等)は阻むことができないのが通常だ。ところがWorkshopの場合、Sphereのプレッシャーと不毛の相乗効果により、1マナ呪文すら許さない状況、言わば1ターン目ではなくゲームスタート以前の0ターン目に押し込むことができる。その一方で自分はMishra’s Workshopの大量マナにより、土地枚数が伸びなくとも脅威を展開できるのだから、これほど上手く不毛を運用できるデッキは他にない。

一般論としても、不毛は非常に存在感が大きく、功罪ともに大きな卡だ。功績は、基本土地の価値を高めていることだ。これはフェッチランド+デュアルランドの超優秀マナベースを擁したエターナル環境において、色拘束を形骸化させることなくデッキパワーとデッキカラー間のトレードオフ関係を保ち、環境に多様性を持たせることに寄与する。一方、時として過度のeasy winをもたらしてしまうのが罪にあたるが、大局的にいって功のほうが遥かに勝る。これを制限すれば、基本土地の価値は僅少となり、皆がデュアルランドを好きなだけ使うようになるだろう。その結果、構築にもプレイングにも技量の差が生じなくなり、マジックの楽しみは損なわれるだろう。


ii.クリーチャー

☆磁石のゴーレム/Lodestone Golem(6点) 1*100%


ファイレクシアの破棄者/Phyrexian Revoker(5点) 3.9*100%

標準的サイズに加え汎用性の高い能力を持つ。モダン・レガシーでも採用される強力卡だが、最も真価を発揮するのは、Moxという標的をもつヴィンテージである。事実、破棄者はヴィンテージで一番多いクリーチャーなのである(https://www.mtggoldfish.com/format-staples/vintage/full/creatures)。Workshopでデッキタイプを問わず4枚採用されるのはもちろん、白単エルドラージや最近見ないがGW系のHateでも活躍する。こうした実情を踏まえ、点数を5点に引き上げた。かつて「反省会反省会」(http://bagupokemon.diarynote.jp/201411060234207292/)では、Workshopの中でも破棄者を使わないデッキタイプとしてKuldotha MUDとEspresso Staxを挙げ4点としたが、前者は淘汰され、後者もまた激減したが、その数少ないクリーチャー枠には今や破棄者がある。

Moxを刺せば、単純に相手のマナを-1しつつパワー2のクロックとして運用できるし、時には色事故に追い込むことさえ可能だ。また、PWを封印できるのも頼もしく、特にダクが登場してからは予め刺しておくプレイングが常套手段となった。

このクリーチャーは単純に強く、卡選択の幅を狭めている。他のデッキへの巻き添えは気になるが、制限することでWorkshopのデッキパワーを抑えるとともに、3枚分のスロットをどうするかで多様性が生まれるだろう。まあイクサランで似たようなのが出る見込みだけど...


歩行バリスタ/Walking Ballista(5点)4*90%

「C16とヴィンテージ反省会/AERとヴィンテージ反省会」(http://bagupokemon.diarynote.jp/201704162116432461/)では4点としたが、強さ・支配率が予想以上だったこと、Bomberman等、青系デッキでも(多くは見られないが)採用可能であること、他フォーマットでも広範な結果を残していることから、5点に見直した。

Workshopにおける除去役として強力だったトリスケリオンがさらに、コストを可変できるのは強力この上なく、制限されてもおかしくないと感じている。制限したとしてもトリスケリオンに戻るだけで、Workshopから除去の機能を奪うことにはならない。


電結の荒廃者/Arcbound Ravager(5点) 4*90%

これも、本稿の執筆にあたって点数を引き上げた卡。4点と採点したのは「MRD DST FDN CHK BOK SOK CSPとヴィンテージ」(http://bagupokemon.diarynote.jp/201603270058034923/)においてだが、この時から荒廃者に有利な4つの動向があったためだ。

1.磁石のゴーレムの制限。これにより3枚分のスペースが空いたことで、荒廃者は固定パーツに近い存在となった。
2.Workshop自体のプリズンからストンピィへの変貌。特に鋳造所の検査官が追加されたことでクリーチャーの面展開が多くなったため、戦線の管理を一手に担う荒廃者の手腕がより評価されるようになった。
3.歩行バリスタの登場。荒廃者により、アーティファクト全てをエネルギー弾に変換して最後の数点(場合によっては10点くらい)を削る動きは強力この上ない。トリスケリオンでも同じプレイが可能だが、卡として歩行バリスタの方が高性能である。
4.先駆のゴーレムの再評価。戦場に召喚した後、優先権をパスせずにゴーレム本体を食えば、3/3バニラ2体だけが残り、一網打尽のリスクを消せるため相性が良い。相手のライフによっては、ゴーレム3体を全て食うことで届いてしまうケースもある。

このようなメタ上の追い風により、現在ではEldrazi Shop以外では4枚採用が標準となっている。迎え撃つ側も、石のような静寂や突然のショックといった、他のトップデッキも意識しつつ荒廃者に有効な対策を求めるようになった。

荒廃者はスタンダードの親和でも猛威を振るい、禁止に至った経歴の持ち主でもある。これはマナ基盤を除いたWorkshopのパーツの中では唯一である。荒廃者を制限することで、他のデッキを巻き添えにすることなく、Workshopの柔軟性を他のデッキが除去で太刀打ちできるレベルにまで落とすことができるかもしれない。ただ、生け贄のタイミングについて最適な判断を下すためには、ルールへの精通はもちろんゲームプラン全体を見通す大局観が必要となり、プレイング次第の卡ともいえる。できれば、このような卡は制限されずにあってほしい。


鋳造所の検査官/Foundry Inspector(4点)4*90%

カラデシュからの新参。3マナのマナ加速クリーチャーと言えば金属細工師を連想する。そして、この両者の対比にこそ、Workshopの変遷が凝縮されているものとみる。先程の新旧両デッキを再掲しよう。
BOM4 1st - Fabian Moyschewitz
4 Triskelion
4 Lodestone Golem
4 Metalworker
3 Karn, Silver Golem
4 Tangle Wire
4 Chalice of the Void
4 Sphere of Resistance
4 Thorn of Amethyst
2 Sword of Fire and Ice
1 Black Lotus
1 Sol Ring
1 Mana Crypt
1 Mana Vault
1 Mox Emerald
1 Mox Jet
1 Mox Sapphire
1 Mox Ruby
1 Mox Pearl
1 Tolarian Academy
2 Mishra’s Factory
2 City of Traitors
4 Wasteland
1 Strip Mine
4 Mishra’s Workshop
4 Ancient Tomb
MO Challenge 08/12/2017 1st - DAZAI
Creature (24)
4 Arcbound Ravager
4 Foundry Inspector
1 Lodestone Golem
3 Phyrexian Metamorph
4 Phyrexian Revoker
4 Precursor Golem
4 Walking Ballista
1 Black Lotus
1 Chalice of the Void
1 Mana Crypt
1 Mox Emerald
1 Mox Jet
1 Mox Pearl
1 Mox Ruby
1 Mox Sapphire
1 Sol Ring
4 Sphere of Resistance
4 Thorn of Amethyst
1 Trinisphere
4 Ancient Tomb
4 Mishra’s Factory
4 Mishra’s Workshop
1 Strip Mine
1 Tolarian Academy
4 Wasteland
コスト合計値の軽量化については既に触れたが、その中でもクリーチャー部分の軽量化が印象的だ。

2010年のWorkshopは磁石のゴーレムからトリスケリオンまでの重いクリーチャーで勝つ。Workshopのマナ基盤をもってしても、Sphereの影響下で5~6マナを安定供給することは無理であるため、そこで金属細工師で一気にブーストする手法を取る。これが成功した場合、相手は複数の拘束アーティファクトのせいで身動きが取れないまま、巨大クリーチャーの振り下ろす鉄腕の下に絶命するだろう。

一方、今年のクリーチャーは、先駆のゴーレム(5マナ)が最重量級にあるものの、12枚もの2マナクリーチャーを擁しており、検査官経由で1マナとなったこいつらを面展開し、最後にSphereでフタをするのが基本戦略となる。これが成功した場合、相手はいくつかのドローサポートや除去を唱えて延命を図るものの、パワー3の検査官をはじめとする複数の素早いクロックを止めきれず、最後には荒廃者やバリスタに押し込まれるだろう。

検査官は明らかに優秀な卡であり、現在の主流であるRavager Shopの起点として採用率・採用数も申し分ない。またWorkshop以外での採用もない。検査官を制限したならば、おそらくWorkshopの主流はEldrazi Shopに移るだろう。


先駆のゴーレム/Precursor Golem(3点)3.2*90%

「SOM反省会」(http://bagupokemon.diarynote.jp/201411050422351719/)では1点とした。先駆のゴーレムは登場当初に試されただけで、長く忘却されていたのだ。しかし、固定パーツの地位にあったからみつく鉄線を先駆のゴーレムに差し替える大胆なアイディアが一世を風靡し、この夏はゴーレムにとって灼熱の季節となった。嚆矢となったのは5月20日のMO Challenge(http://magic.wizards.com/en/articles/archive/mtgo-standings/vintage-challenge-2017-05-22)だろうか。そこで急遽3点に引き上げたが、今後活躍が定着していくようならさらに加点の可能性もある。

先駆のゴーレムの台頭はメタゲームによるところが大きい。噴出・ギタクシア制限後の新環境ヴィンテージを制し、一強の座を占めたWorkshopにとって、最大の敵は同型である。Workshop同型は鉄に満ちた世界であり、インスタント・ソーサリーは存在しないので、ゴーレムのデメリットは無視でき、5マナにして3体の合計9点クロックという図体のみが評価される。また、公式記事(http://mtg-jp.com/reading/iwashowdeck/0019411/)で岩SHOW兄貴が指摘するとおり、磁石のゴーレムとの兼ね合いを気にしなくてよくなった点もあるかもしれない。

採用数は2~4枚。振興のクリーチャーであるため、今は様子見だろう。


さて、ここまでのクリーチャー枠を振り返ってみよう。

1×磁石のゴーレム
4×ファイレクシアの破棄者
----ここまでWorkshop固定(計5枚)----
4×歩行バリスタ
4×電結の荒廃者
4x鋳造所の検査官
2×先駆のゴーレム
----ここまでRavager Shop固定(計19枚)----

Ravager Shopのクリーチャー数は24~25枚だから、残り5~6枚のスロットにプレイヤーの考えが反映されることになる。その候補となるのは、まず3枚目4枚目の先駆のゴーレム。そして以降のクリーチャー達である。

ファイレクシアの変形者/Phyrexian Metamorph(4点)2.5*60%

全盛期よりやや落ちた卡。理由としては次の4つではないかと考えている。

1.好相性だった磁石のゴーレムが制限された。
2.オース対策というmotivationの縮小。かつてはオースはトップメタにあり、そこから出てくる伝説のクリーチャーをコピーすることで唯一性ルールにより除去できた。今やオースはトップメタとは言えず、2013年7月のルール変更により、このテクニックも通じなくなった。
3.Workshop自体の軽量化。変形者が3+αマナなので、乱暴に言えばコピーする対象が4マナ以上なら強く、2マナ以下なら弱い動きだといえる。
4.トリスケリオンの枠に入った歩行バリスタと相性が悪い。

しかし3.は裏を返せば、難題の予見者や現実を砕くものをコピーできれば万歳ということでもある。採用ぶりを調べると、Eldrazi Shopでは3枚で固定、Ravager Shopでは採用数・採用率とも低めという状況が見えてくる。これらを基に数字を見積もった。

デッキタイプの主役というわけではないので制限は考えなくてもよいであろう。


搭載歩行機械/Hangarback Walker(3点)2.0*25%

Vintage Championship 2015で大々的にデビューした。そして、それが全盛期となり、採用率は漸減傾向にある。このことから「ORGとヴィンテージ反省会」(http://bagupokemon.diarynote.jp/201509102128409430/)から1点引き下げ、3点とした。

漸減の理由としては、単純にカラデシュ・ブロックで(直前のチャリス・ゴーレム制限による空洞を補って余りあるほどに)大量の新規勢力が参入したため、スロットが追いつかなくなってきたからだろう。それと、個人的な推測ではダクに弱いのも痛かったのではないかと思う(コントロールを奪取された場合、トークンをばらまく死亡誘発は奪った側が行う)。


鋼の監視者/Steel Overseer(2点)4*20%

最近伸びているクリーチャーだ。直近のVintage ChallengeのTOP32を見ると、Workshopは12あった。その中で鋼の監視者を採用したのは5デッキで、搭載歩行機械(2デッキ)を上回った。もともと見かけるクリーチャーではあったが、7月に入ってからの伸びが顕著である。

これは、Ravager Shopの得意とする面展開及び+1/+1カウンターを介したシナジーとの相性の良さを考えれば、ごく納得の行く推移である。また、5月下旬に起こった先駆のゴーレム革命が多くのプレイヤーに受容された結果、先駆同士の睨み合いを打破できる存在として注目が集まったことも追い風ではなかったか。今後の動向によっては点数引き上げもある。


難題の予見者/Thought-Knot Seer(4点)4*10%
現実を砕くもの/Reality Smasher(3点)3.3*8%

エルドラージの中でも傑出した2者。Eldrazi Shopは、マナベースに相当な負荷がありデッキパワーではRavager Shopにやや劣る反面、メタゲーム上の優位がある。
1.Ravager shopや逆説に対し、無のロッドを仕掛けられる。
2.非Workshopのマッチアップにおいて、Eldrazi達はアーティファクト除去を受け付けない。

これらは非Workshopのエルドラージデッキでも中心的役割を果たしているため、制限はない。


iii.ロック

☆三なる宝球/Trinisphere(6点)1*99%


☆虚空の杯/Chalice of the Void(5点)1*100%


抵抗の宝球/Sphere of Resistance(5点)4*100%
アメジストのとげ/Thorn of Amethyst(5点)4*100%

抵抗の宝球は「TMP STH EXOとヴィンテージ」(http://bagupokemon.diarynote.jp/201604080025406048/)で採点した4点から引き上げた。なぜなら2.で示した点数基準における「メタゲームやプレイングを変動させうる存在」に該当することに今更ながら気付いたからだ。この2枚の持つコスト増加能力は、ゲームプレイにおいては2つの影響として現れる。

1.単純に詠唱コストへの到達を遅らせる。例えばダク・フェイデンを唱えるための1URを2URにすることで、もう1ターンかかるようになる。その1ターンでこちらは1回殴ることができるし、手札にあればSphereを追加して、さらに1ターン延長させることもできるだろう。

2.軽量呪文の連打にブレーキをかける。影響としてはこちらの方がむしろ大きいだろう。なぜなら
呪文それぞれにSphereが負荷をかけ、2つ唱えれば2マナ、3つ唱えれば3マナと、追加のコストがどんどん増大していくからだ。あれほども優秀なドローやマナ加速に満ちたヴィンテージで、ストームが最強デッキでなく、逆説の支配率が12%程度に甘んじているのは、Sphereが、ゲームプレイ上もメタゲーム上も押さえつけているためだ。

以上、Sphereについて一般論的に述べた。以下では2枚の差異を考察することとしたい。

抵抗の宝球は全てに平等に働く卡であるため、抜け道は存在せず、運用には大量のマナ供給を確保する他にない。逆にそれができるなら抵抗の宝球は最高の卡だ。したがって、Workshopが必ず抵抗の宝球を採用する一方、Workshop以外で抗の宝球を採用するデッキは絶無に近い。Workshopと抵抗の宝球は=で結ばれる。

アメジストのとげはクリーチャーには働かないため、デッキをフルクリーチャーにすることで相手だけ締める戦略が可能であるから、Workshopのみならずヘイトベア系統でも使われる。中でも、アメジストのとげ内蔵クリーチャーであるサリアを主戦力とした白単エルドラージは、まさしく棘能力をテーマとしたデッキといえる。もっとも、これは使われる側もクリーチャーならとげをケアできるということでもあり、クリーチャーであることが1つの+基準になるなど(鋳塊かじり等)影響は抵抗の宝球以上に大きい。

両者の力量・採用数は拮抗しているが、他アーキタイプまで視野を広げると採用率ではアメジストのとげが大きく勝る。白単エルドラージ等の巻き添えを防ぐためにも、制限は抵抗の宝球を優先すべきと考える。


からみつく鉄線/Tangle Wire(3点)4*2%

かつてはロックの仕上げとして重要な卡だったが、先駆のゴーレムに取って代わられ、急激に減少した。mtggoldfishによれば、この1ヶ月にWorkshopが88デッキある中で鉄線を採用したのは2デッキのみである。

この現状を受け、点数を「MMQ NEM PCY INV PLS APCとヴィンテージ」(http://bagupokemon.diarynote.jp/201604040011036770/)での5点から3点に降格した。

このように今では見かけることすら珍しくなっており、制限は考えられない。


5.まとめ

以上の考察に基づき、危険性順に制限候補を整理する。

大 抵抗の宝球 ファイレクシアの破棄者
中 歩行バリスタ 電結の荒廃者
小 アメジストのとげ 鋳造所の検査官 Mishra’s Workshop

6.制限の先へ

何らかの制限によりWorkshopが力を落とせば、待っているのはおそらくメンターと逆説の時代だろう。しかし、これらによる寡占的は、Workshopによる一極体制ほどには深刻な懸念とならないと考えている。なぜなら、全ての根源であるマナを支配するというWorkshopの特殊性により、対策を講じても詠唱自体を封じてしまうため、環境の自浄作用は期待できない。一方、この先例えばメンターが飛び抜けたトップメタになったとしても、硫黄の精霊や夜の戦慄といった専用の対策を講じることで、アンチデッキは成立できるだろう。

コメント

じんしん
2017年8月22日8:58

すごいしっかり書いていてすごいタメになりました(語彙力の低下)
自分もMUD使っていますがバリスタはやはりワクショ以外の土地1からでも軽く出てきてトリスケとは段違いに感じます・・・が、荒廃者がそもそもいなくなれば・・・な感じも有りますのでどう制限かけてくるかドキドキです

玩家
2017年8月22日22:43

>>じんしんさん
バリスタは強いですよね。
噴出制限によりフリータイミングのインスタントが少なくなってしまったので、バリスタに射撃された導師を果敢で守れなくなってしまったのがキツいです。

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