<STH>

ストロングホールドはストロングと銘打つだけあって強く、判定に苦慮した。その中で比較的劣等と思われる卡は...
Torment / 責め苦 (1)(黒)
エンチャント — オーラ(Aura)
エンチャント(クリーチャー)
エンチャントされているクリーチャーは-3/-0の修整を受ける。
2マナソーサリータイミングにも関わらず影響は微々たるものであり、上位互換にも事欠かない。それでもリミテッドで消極的なシャドー対策くらいにはなるため、常軌を逸して弱いとまではいえない。

<改善>
上位互換として次がある。
・グリールのなで回し/Greel’s Caress 瞬速つき。
・すがりつく闇/Clinging Darkness 修整が-4/-1
・感覚の剥奪/Sensory Deprivation 青、1マナ。

他に候補として検討したのはこいつだ。
Primal Rage / 怒りの発散 (1)(緑)
エンチャント
あなたがコントロールするクリーチャーはトランプルを持つ。(あなたがコントロールするクリーチャーが、自身をブロックしているすべてのクリーチャーを破壊するのに十分な戦闘ダメージを割り振る場合、あなたはその残りのダメージを防御プレイヤーかプレインズウォーカーに割り振ってもよい。)
これも大概ひどい(仮にキャントリップ付でも構築レベルではなく、リミテッドでもあまり優先されなかったに違いない)が、原初の激情あたりに比べればいくらか良い。巨大化をはじめとしたコンバットトリックをテーマとした緑系アグロならある程度働きそうだ。

<EXO>

ウェザーライト号のラース脱出を描くエキスパンションだ。しかし、残念なことに、逃げ遅れた卡も何枚かある。
Convalescence / 回復期 (1)(白)
エンチャント
あなたのアップキープの開始時に、あなたのライフが10点以下である場合、あなたは1点のライフを得る。
ボール・ライトニングと火炎破を擁し、灼熱のラースを体現する赤単は電光石火の素早さを誇り、スタンダード環境の最右翼を担った。この赤単が睨みを効かす中、ライフ10点とは、紛れもない緊急事態である。それに対して、回復期の仕事がアップキープごとにライフ1点というのでは、悠長を通り越して怠惰といえよう。ライフを11点以上にはしてくれないので、何らかの悪用(相手をロックして無限ライフを得るなど)も見込めないという点では、かのFarmsteadにすら劣る。

<改善>
アジャニのマントラという上位互換が出ている。
Ajani’s Mantra / アジャニのマントラ (1)(白)
エンチャント
あなたのアップキープの開始時に、あなたは1点のライフを得てもよい。
これも大して強くない、むしろ劣等の部類に入る卡ではあるが、シンプルなのはよいことだ。

窮地に陥った際の打開策という性質をより明確に打ち出した例としては、次がある。
Convalescent Care / 病みあがりの介護 (1)(白)(白)
エンチャント
あなたのアップキープの開始時に、あなたのライフが5点以下である場合、あなたは3点のライフを得るとともにカードを1枚引く。
これは当時マナバーンで調整が容易だったこともあって構築でも使われた。
Fighting Chance / ファイティング・チャンス (赤)
インスタント
ブロックしているクリーチャー1体につき、コインを1枚投げる。あなたがコイン投げに勝った場合、このターン、そのクリーチャーが与えるすべての戦闘ダメージを軽減する。
有名どころである。そもそもブロッククリーチャーからのダメージを軽減するという目的からして疑問である。状況を場合分けしてみると...

自軍の方が大きい→軽減してもらうまでもなく突破できるから100%無意味。
敵軍の方が大きい→攻撃に行く必要がほとんどない。頭数で勝る場合は「ブロックされなかった連中で本体にダメージを通し、ブロックされた連中を救済して次ターンも同様に攻める」という方法はあるかもしれない。
自軍・敵軍が互角→両者死亡するところを一方的に倒せるようになる。

このとおり、ファイティング・チャンスがゲーム上に意味を持つような局面は大変限定的である。それが1ターンの使い切り、それも運任せでは、使い物にならない。

<改善>
もう1マナ足すだけで、次のとおり力強い永続的能力を持った卡が得られる。
Dolmen Gate / 巨岩の門 (2)
アーティファクト
あなたがコントロールする攻撃しているクリーチャーに与えられるすべての戦闘ダメージを軽減する。
そして、巨岩の門ですら構築ではお払い箱だった(リミテッドでは多分強い)。
Oath of Mages / 魔道士の誓い (1)(赤)
エンチャント
各プレイヤーのアップキープの開始時に、そのプレイヤーは自分の対戦相手であるとともに、自分よりもライフが多いプレイヤーを対象として選ぶ。前者のプレイヤーは、「魔道士の誓いは後者のプレイヤーに1点のダメージを与える」ことを選んでもよい。
これの問題は次3点に整理できる。

1.単純に火力が弱い。アップキープごとに1点は、たとえ毎ターン誘発できる前提でも、大したクロックにはならない。

2.色の戦略と整合しない。これはwikiでも散々指摘されているとおりだ。相手の盤面が整わない隙を突き、クロックを確立すべき序盤にこんなのを貼っているようでは、相手は容易に体勢を整えてしまう。そしてライフが逆転し、魔道士の誓いが動き出す頃には、毎ターン1点などは焼け石に水となっていることだろう。

3.ルール変更による弱体化。M10ルール施行前ならば、マナバーンを利用してライフを相手より下に持っていくこともできなくはなかった。今はそれすら不可能。

<改善>
Curse of the Pierced Heart / 貫かれた心臓の呪い (1)(赤)
エンチャント — オーラ(Aura) 呪い(Curse)
エンチャント(プレイヤー)
エンチャントされているプレイヤーのアップキープの開始時に、貫かれた心臓の呪いはそのプレイヤーに1点のダメージを与える。
かつて引き合いに出したことのある卡だ。侵食/Erosionという、この連載の中で比べても相当気合の入った弱卡を説明した時のことである。さて、貫かれた心臓の呪いは魔道士の誓いがやりたかったことは全部やっている。しかし、オースサイクル、いやエクソダス全体のテーマである「不利なプレイヤーを救済する」コンセプトを保つとすれば?
Oath of Mages / 魔道士の誓い (1)(赤)
エンチャント
各プレイヤーのアップキープの開始時に、そのプレイヤーは自分の対戦相手であるとともに、自分よりもライフが多いプレイヤーを対象として選ぶ。魔道士の誓いは、後者のプレイヤーに2点のダメージを与える。
至極単純ではあるが、ダメージを2点にしてみるのはどうだろう。

上で見たように、1点ダメージでは微弱すぎたが、2点とすれば、2回誘発で4点ダメージを計上するようになる。2マナの火力としては、即効性と引き換えに長期的により大きなダメージを与えられる存在となる。

また駆け引きの点でも深みを増す。オリジナルの1点では、魔道士の誓いが誘発した場合、それに続けてクリーチャーによる攻撃か何かがなければ、両プレイヤーのライフが=になることはあっても逆転することはあり得なかった。2点とすることで、ライフ差が奇数なら、魔道士の誓いがその差を埋めていった結果、15対16→15対14→13対14...と両プレイヤーのアップキープごとに誘発し続けるようになり、テンポが良いものとなる。逆に、ライフを守りたい相手方にしてみれば、ライフ差を偶数にすることで誘発の停止を狙いにくるはずだ。ここにライフ差の奇偶という焦点が生まれる。

もう1つの些細な変更として、ダメージを任意ではなく義務にしている。これでテキストが簡略化されたと共に、若干ながら強化もされている。というのは、魔道士の誓いを貼ったプレイヤーがダメージを与えたくないケースはまずない一方、相手プレイヤーにしてみれば、自分のアップキープに魔道士の誓いを誘発させたことでライフが逆転してしまう場合、自分が魔道士の誓いの標的になってしまうことを恐れて、誘発を放棄する選択肢があり得る。それを予め禁止しておいてデッドレースを強制するわけだ。

テンペスト、ストロングホールドは最弱の者でもまだ理解できる性能だったが、エクソダスにきて一気に突き抜けた感がある。

ところでこれ強くね?
Wall of Nets / 網の壁 (1)(白)(白)
クリーチャー — 壁(Wall)
防衛(このクリーチャーは攻撃できない。)
戦闘終了時に、網の壁によってブロックされているすべてのクリーチャーを追放する。
網の壁が戦場を離れたとき、網の壁によって追放されたすべてのカードを、オーナーのコントロール下で戦場に戻す。
0/7

コメント

Hiro
2017年6月5日15:17

初めまして。着眼点が面白いとなぁーと思い、過去のものも読み漁ってしまいました笑

玩家
2017年6月5日21:28

>>Hiroさん
この退廃的な連載を読み漁ってくださったとのこと、たいへん光栄です。
マジックの歴史を概観するとき、環境を作り上げた卡(=トップクラスに強い卡)が基準になるのは当然ではありますが、一方でこういう最弱卡を通して見ると、それはそれでウィザーズのデザイン方針等を垣間見ることができ、味わい深いものがあります。

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