最弱への旅8
2016年6月11日 Magic: The Gatheringアイスエイジはブロック制度を導入して初のエキスパンションであり,マジック史上に重要な位置を占めている.凍てついた氷の中からガラクタを掘り起こす作業はさぞ楽しいものとなるだろう.
Cooperationはそんなバンドを与えてくれるオーラだ.3マナで.クリーチャー1体に.
<改善>
卡同士の協力というテーマはMTG全体で,いや全てのTCGで尊重されており,大変重要だ.通常シナジーとかコンボといった言葉に置き換えられる観念だが,これがためにプレイヤーはゲームプレイ・フレーバーの両面で楽しみを見出すことができる.また競技的な観点からも,卡を強い順から60枚放り込んで作ったデッキが最強というようなつまらない環境を避け,多様性を生み出すことができる.バンドも理念自体は間違っていない,ただ経験の不足により理念をゲーム上に正しく表現することができなかっただけだ.
より直感に即したデザインとして,こんなテキストはどうだろうか?
上手く行けば相手の戦線を引き裂く可能性もあるが,それには相手のクリーチャーをそれぞれ一回り上回るクリーチャーを従えていなければならず,条件は相当に厳しい.しかも,これに戦闘ステップを費すため,後世の格闘などと異なり,敵のブロッカーを排したターンに本体への総攻撃を加える,といった使い方もできない.5マナならもっと無条件に戦況を覆す力があってよいはずだ.当時ですら発火という決定力のある火力があったのだから.もっと言えばインスタントなのに自分のターンにしか唱えられないところも欠点で,(cf.手練れの戦術/Master Warcraft).相手のデカブツをこちらの中堅が束になってなぎ倒すようなプレイもできないわけだ.見れば見るほどどうしようもない.
<改善>
簡単,最後の1行を撤去すればよい.そうすれば混沌/Chaosの2マナ重くなって器用になった相互互換となる(という言い方からもわかるように,依然として相当に悪い).
<改善>
18000 wordsはMeltingのコストをRにすることを提唱している.そうすれば今よりずっと良くなるだろう,しかし根本的解決とはいえない.なぜなら氷雪というメカニズムそのものが失敗しているからだ.この時期「対戦相手は(2)を支払うことを選ばない限り...」とかいう付帯条件が無闇に多いことからもわかるように,当時の制作陣はあまりに腰が引けていて,革新的なデザインに向けた一歩を踏み出すということがなかなかできなかった.その結果,氷雪というメカニズムもデッキを組ませるだけの魅力を欠いた,軟弱な出来栄えとなってしまった.10年の時を経たコールドスナップとなると流石に卡の作り方も慣れたもので,氷雪マナという観念を用意したことで,氷雪デッキもいくらか出現した.しかし,各フォーマットでメタの中心とまではならず,今となってはモダンに赤単氷雪が細々と存在するくらいで,レガシー・ヴィンテージで氷雪土地を使う者はいない(実のところ島の代わりに冠雪の島が使われることはあるので,「いない」というと語弊があるが,氷雪性に特段の価値を置かれてはいないから,結局は島と同じだ).では,氷雪をもっともっと強くして,エターナル級のメカニズムに仕上げるべきだったか?これも恐らくNOだ,仮にそうしたとするとレガシー・ヴィンテージではこぞって冠雪の基本土地を使うようになり,元々の基本土地を誰一人使わないといった光景が出現することになるが,恐らくこれはウィザーズの望むところではないだろう.氷雪メカニズムには最初から越えるべきでない強さの限界が設けられていたのだ.
とどのつまり氷雪は相手が悪かった.基本土地という,あまりに偉大でゲームの根幹を成す存在に挑んだところで勝ち目がない.
<改善>
Lyre(竪琴)なのだから,特に生け贄の必要はないのでは?
番外編
依然,デザイン・デベロップとも未熟を感じさせる部分が多い.しかし友好色・対抗色意識の芽生えも看取され,「どういうデッキを組ませたいか」という制作者としての方針が何となく伝わってくる部分もあって,そこは従来にない進歩かなと思わされる.
Cooperation (2)(白)バンドはどこをとっても駄目な能力だ.異常に複雑で,直感的でなく,条件が厳しく,弱く,さほど印象的なことをやってくれない.そして「他の~とのバンド」というさらに出来の悪い弟と見分けづらいのも,デザインの汚さに拍車をかける.
エンチャント — オーラ(Aura)
エンチャント(クリーチャー)
エンチャントされているクリーチャーはバンドを持つ。
Cooperationはそんなバンドを与えてくれるオーラだ.3マナで.クリーチャー1体に.
<改善>
卡同士の協力というテーマはMTG全体で,いや全てのTCGで尊重されており,大変重要だ.通常シナジーとかコンボといった言葉に置き換えられる観念だが,これがためにプレイヤーはゲームプレイ・フレーバーの両面で楽しみを見出すことができる.また競技的な観点からも,卡を強い順から60枚放り込んで作ったデッキが最強というようなつまらない環境を避け,多様性を生み出すことができる.バンドも理念自体は間違っていない,ただ経験の不足により理念をゲーム上に正しく表現することができなかっただけだ.
より直感に即したデザインとして,こんなテキストはどうだろうか?
Cooperation (2)(白)全体強化や二段攻撃などとのシナジーが考えられるようになった.
エンチャント — オーラ(Aura)
エンチャント(クリーチャー)
エンチャントされているクリーチャーは「T:クリーチャー1体を対象とする。それはターン終了時まで+X/+Yの修整を受ける。Xはこのクリーチャーのパワーであり、Yはそのタフネスである。」を持つ。
Melee (4)(赤)相手のブロックを指定する戦闘サポート呪文.一見,旧オドリックの効果を抜き出したインスタントと見えるが,ブロックされなかったクリーチャーの戦闘をキャンセルするというクソみたいなテキストがある関係上,要は戦闘を介した除去.
インスタント
Meleeは、あなたのターンの間で、ブロックしているクリーチャーが指定される前の戦闘中にのみ唱えられる。
あなたはこの戦闘で、どのクリーチャーでブロックするか決めるとともに、それらのクリーチャーがどうブロックするか決める。
この戦闘で、クリーチャー1体が攻撃してブロックされないたび、それをアンタップし戦闘から取り除く。
上手く行けば相手の戦線を引き裂く可能性もあるが,それには相手のクリーチャーをそれぞれ一回り上回るクリーチャーを従えていなければならず,条件は相当に厳しい.しかも,これに戦闘ステップを費すため,後世の格闘などと異なり,敵のブロッカーを排したターンに本体への総攻撃を加える,といった使い方もできない.5マナならもっと無条件に戦況を覆す力があってよいはずだ.当時ですら発火という決定力のある火力があったのだから.もっと言えばインスタントなのに自分のターンにしか唱えられないところも欠点で,(cf.手練れの戦術/Master Warcraft).相手のデカブツをこちらの中堅が束になってなぎ倒すようなプレイもできないわけだ.見れば見るほどどうしようもない.
<改善>
簡単,最後の1行を撤去すればよい.そうすれば混沌/Chaosの2マナ重くなって器用になった相互互換となる(という言い方からもわかるように,依然として相当に悪い).
Melting (3)(赤)18000 wordsではこれをAvalanche(氷雪のみ対象のX土地破壊)と同着で34位に置いたが,僕はAvalancheをそこまで低くは見積もっていない.それは氷雪コントロールのマナ基盤を覆し,死を与えるだけの力がある.一方Meltingはどうかというと,主体的な使い方ができず,ゲームの99%以上の相手に何らの影響を及ぼさない.そして1%を大きく下回る標的に対してもさほどの仕事してくれない.モダンの赤単氷雪で言えば,Meltingを貼れば確かに相手は占術の岩床でアドバンテージを得ることができなくなり,雪崩しで除去しようにも雪がなくて困るだろう.しかし稲妻は何ら問題なくクリーチャーを除去できるし,槌のコスや嵐の息吹のドラゴンによる猛攻はMeltingなどという悠長なものを弄んで隙を作ったあなたを滅ぼすだろう.
エンチャント
すべての土地は氷雪でない。
<改善>
18000 wordsはMeltingのコストをRにすることを提唱している.そうすれば今よりずっと良くなるだろう,しかし根本的解決とはいえない.なぜなら氷雪というメカニズムそのものが失敗しているからだ.この時期「対戦相手は(2)を支払うことを選ばない限り...」とかいう付帯条件が無闇に多いことからもわかるように,当時の制作陣はあまりに腰が引けていて,革新的なデザインに向けた一歩を踏み出すということがなかなかできなかった.その結果,氷雪というメカニズムもデッキを組ませるだけの魅力を欠いた,軟弱な出来栄えとなってしまった.10年の時を経たコールドスナップとなると流石に卡の作り方も慣れたもので,氷雪マナという観念を用意したことで,氷雪デッキもいくらか出現した.しかし,各フォーマットでメタの中心とまではならず,今となってはモダンに赤単氷雪が細々と存在するくらいで,レガシー・ヴィンテージで氷雪土地を使う者はいない(実のところ島の代わりに冠雪の島が使われることはあるので,「いない」というと語弊があるが,氷雪性に特段の価値を置かれてはいないから,結局は島と同じだ).では,氷雪をもっともっと強くして,エターナル級のメカニズムに仕上げるべきだったか?これも恐らくNOだ,仮にそうしたとするとレガシー・ヴィンテージではこぞって冠雪の基本土地を使うようになり,元々の基本土地を誰一人使わないといった光景が出現することになるが,恐らくこれはウィザーズの望むところではないだろう.氷雪メカニズムには最初から越えるべきでない強さの限界が設けられていたのだ.
とどのつまり氷雪は相手が悪かった.基本土地という,あまりに偉大でゲームの根幹を成す存在に挑んだところで勝ち目がない.
Goblin Lyre (3)ゴブリン=ギャンブルという伝統はあるが,それで何でも許されるかといえばそうはいかない.プレイヤーが博打卡に求めるのは「勝ちか負け」ではなく「勝ちか大勝ち」だ.言い換えれば不運でも最低限の保証を欲しがる.例としてはゴブリンの放火砲だが,その実際の運用を見ればギャンブルとは言い難い.熱狂のイフリートの方がわかりやすいかもしれない.コインが表なら除去を避けられるので大勝利,裏でも所詮は除去される運命だった卡,特に痛痒はない.
アーティファクト
Goblin Lyreを生け贄に捧げる:コインを1枚投げる。あなたがコイン投げに勝った場合、対戦相手1人を対象とする。Goblin Lyreはそれに、あなたがコントロールするクリーチャーの数の等しい点数のダメージを与える。あなたがコイン投げに負けた場合、Goblin Lyreはあなたに、その対戦相手がコントロールするクリーチャーの数の等しい点数のダメージを与える。
<改善>
Lyre(竪琴)なのだから,特に生け贄の必要はないのでは?
Goblin Lyre (3)ノンクリーチャー相手なら,負けても何も失うものはない.毎ターン起動していれば何回かは勝つこともあって,運任せなクロックとして使い道が生まれるだろう.
アーティファクト
2,T:コインを1枚投げる。あなたがコイン投げに勝った場合、対戦相手1人を対象とする。Goblin Lyreはそれに、あなたがコントロールするクリーチャーの数の等しい点数のダメージを与える。あなたがコイン投げに負けた場合、Goblin Lyreはあなたに、その対戦相手がコントロールするクリーチャーの数の等しい点数のダメージを与える。
番外編
Reality Twist (青)(青)(青)
エンチャント
累加アップキープ(1)(青)(青)(あなたのアップキープの開始時に、このパーマネントの上に経年(age)カウンターを1個置く。その後あなたがこの上に置かれている経年カウンター1個につきアップキープ・コストを1回支払わないかぎり、それを生け贄に捧げる。)
マナを引き出す目的でタップされた場合、平地(Plains)は(赤)を、沼(Swamp)は(緑)を、山(Mountain)は(白)を、森(Forest)は(黒)を、他のいかなるタイプのマナの代わりに生み出す。
Naked Singularity (5)これらは弱すぎる訳ではないが,デザインがハンパなく汚い.こんな卡をエキスパンションに2枚も封入したことは驚き呆れるばかりである.しかも両方レア.
アーティファクト
累加アップキープ(3)(あなたのアップキープの開始時に、このパーマネントの上に経年(age)カウンターを1個置く。その後あなたがこの上に置かれている経年カウンター1個につきアップキープ・コストを1回支払わないかぎり、それを生け贄に捧げる。)
マナを引き出す目的でタップされた場合、平地(Plains)は(赤)を、島(Island)は(緑)を、沼(Swamp)は(白)を、山(Mountain)は(青)を、森(Forest)は(黒)を、他のいかなるタイプのマナの代わりに生み出す。
依然,デザイン・デベロップとも未熟を感じさせる部分が多い.しかし友好色・対抗色意識の芽生えも看取され,「どういうデッキを組ませたいか」という制作者としての方針が何となく伝わってくる部分もあって,そこは従来にない進歩かなと思わされる.
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